第32話

「そ、そんなヒトいません。」


アタシに彼氏と呼べるヒトが現在・過去にいたという事実はない。



「そう、誰かを想って怖がっているのかと思ったけど心配ないみたいだね……。」



そう言うと川嶋先生は左の耳元に唇を落とす。



それがとてもこそばゆく、羞恥が増した。


ただ傍にいるだけでも、話をするだけでも動悸がするほどココロが不安定になってしまうのに。


こんなコトをされると、もうどうしていいのか分からない。


もしアタシが、


一度でも経験があったならこんな風に身体を強張らせたりしないと思うのに……。

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