第30話

「んっ……っ!?」


アタシは彼の行為にビックリして顔を背ける。


ちょっと待って。

アタシと川嶋先生がここまでする必要なんてないのに。


「りおこサン。」



ズキン、と胸が痛くなる。


アタシの嘘の名前をこのヒトは、

甘く囁く。


アタシが視線を合わせないでいると、


「その気、がない?」


そうじゃない、その気になるのは間違っているから……。


アタシは無言で頷いた。


すると川嶋先生は小さく笑って、


「おかしいね、」


そう言われてアタシはそっと彼を見る。


「君に俺は拒否されてるっていうのに、」


言葉を続けながら川嶋先生はアタシの首筋に触れ顔のラインを手背でなぞる。


何度も。


「それでも止めようと思わないのはどうしてなんだろうね。」



……そう言った彼の言葉に、


あの時みたいに背中がゾクリとした。


でもそれは恐怖の方ではないという事がいま理解できた。

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