第29話

「性別が女、他人、同級生……ただそれだけで。」


「そんな言い方っ、」


「俺は自分の子どもを持たない代わりに知らない誰かの子どもを助け……、」


そう言いかけて浦崎先生は黙ってしまった。


そして、


「なぁ、……凪は菜々をどんな風に抱くんだ?」


「……そんな言い方、不愉快です。」


私の言葉に浦崎先生は薄く笑った。


「……とにかくお前が俺を嫌いなように俺もお前が嫌いだ。」


「き、嫌いなら私に思い切り冷たい態度をとってください。」


いつの間にか外が少し明るくなってくる。


「もう帰れよ。」


「言われなくても帰ります。」


私が椅子から立ち上がると、


「もうここには来るな。俺が熱で倒れてもほっとけ。」




私は玄関のドアを閉めた。


どうしてこんなに胸が痛いの。


エントランスを出ると、


「あ……、太陽が眩しいっ、」


涙が止まらなかった。

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