scene12

第54話

どのくらいの時間が経ってた?

数秒?1分?


院瀬見くんの唇が離れた瞬間に私はキスしたことを理解した。


お互い無言だった。


ここは……私が、年上の私が何か言わなければ。


大人の余裕を見せるの?

それとも叱る?


「……怒らないんですか?」


「は?」


先に言葉を発したのは院瀬見くんだった。


「何も言わないで文月さんに触れたのに……、」


「あ……、ちょっとビックリしただけ。どうしたの?ダメだよ、好きな人としなくちゃ。私を……代わりにしないで。」


そう言うと彼はハッとしたような、まるで我に返ったような表情をした。

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