第53話

どうして?

凄く近いんですけど!?


そしてこんな至近距離だときめ細かい肌質まで見えちゃって……もう拝みたい気分。

もう嫉妬に近いレベル。

一体どういう恋愛遍歴を辿ってきたらこんな色気も身につくのかレクチャーして欲しいとさえ思う。


「……パソコンが大丈夫なら良いです。」


「あ……うん、」


そうだ彼は私がどうこうじゃなくてパソコンを心配したのね。当たり前か。


色んな意味で彼に嫉妬している自分に気づいたからコーヒーを零したなんて言えない。


「文月さん、」


「あ、コーヒー入れ直さなくちゃ、」


これ以上近いのは勘弁、自分の顔が熱くなるのが嫌でも分かっていた。


でも移動しようとしたら簡単に遮られてしまった。


思いもよらない出来事……、


彼の唇は凄く柔らかかった。

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