第52話

「あ、ううん、普通よ、絶対。」


「絶対?」


院瀬見くんは私の言葉に怪訝な表情をした。


ああっ、……どうした!?私はどうして彼を前にすると意図反する言葉を発してしまうのか。

今凄く自分を1発平手打ちしたい気分。

だって彼は年下のくせに仕事もできてカッコイイし……、


……え?


「文月さん、流れてます。」


「え……、え、あっ!?」


持っていたカップからコーヒーが滴り落ちていた。

急いで近くにあったティッシュペーパーで自分のデスクを拭く。

パソコンに落ちなくて良かった。


「大丈夫ですか?」


院瀬見くんは私の近くに来る。


「あ、うん、ゴメン一瞬ボーっとしてた。」


そう言って彼の方を向いた。


思いの外彼は至近距離に立っていた。


マズイ、心臓が飛び出しそうだ。

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