第31話

美希の言葉に私も院瀬見くんも目を丸くする。


「あ、僕は何か気に触ること言いましたか?」


彼がそう言うと美希は我に返る。


「え、あ、ごめん!院瀬見くんは悪くないから。やだー私酔ったのかな!?」


美希は苦笑いしながらビールを一気に流し込んだ。


美希は……私の嫌な過去を社内で知っている唯一の人。

知っているからこそ私を守ってくれたんだと思う。



「美希さん、飲み過ぎですよ。もうそれくらいにしてください。」


院瀬見くんは美希からグラスを取り上げた。

本当に美希は珍しく酔っているようだった。


「文月さん、もう出ますか?僕はこの酔っ払いの美希さんを送って帰ります。」


「あ、そうだね?じゃあ美希をお願いします。」


美希さんか……、


私もさっき名前で呼んでくれたのにな、


なんて今何考えたんだろ私は。

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