39

「意外です。先輩は、いつも見学の女の子たちにニコニコ手を振ってたから、女子には優しいばっかりなのかと」



そう、私以外には。



「そっちのが余計な争いとかなくて、楽だからね。それに、俺がきっかけでも、サッカーに興味もってくれるのは嬉しいから」



私、今まで浅野先輩の何を見ていたんだろう。


表面だけ見て、全部知った気でいて、どうせあの人はって決めつけて。



「だからさ、梨子ちゃんも同じだと思ってた。知宏目当てで入部するような子なんだし、それが俺じゃなくなったってだけで、結局は同じだろって。

そんなマネージャーしかいないなら、いっそのこといらねーなって。だから、わざと冷たくしたこともあったんだけど」



私に意地悪をしていた本当の理由は……もしかして、これ?



「でも、なんか違うし」



と、浅野先輩はうつむき加減の私の顔を覗きこんだ。


あまりの至近距離に、止まってしまうんじゃないかと思うほどにどくんと大きく心臓が高鳴る。



「誤解してた。ごめんね?」



上目遣いで笑顔を見せられ、顔が爆発したみたいに熱くなる。


この人は、もっと今以上に自分の顔面の破壊力を自覚すべきだと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る