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離された頬を両手で包んでさする。


痛い。それなのに、どうしてだろう。


そんなに嫌じゃないと思ってしまうのは。



「てか、澪ちゃん言うほど綺麗でもなくない?梨子ちゃんだって可愛いじゃん」


「……目悪いんじゃないですか?」



ああ、もう、また可愛くないこと言った……。


今日、ブスって言ったばっかりのくせに、可愛いとか言うから。


ちょっと……嬉しいとか思った私は単純すぎる。


頬が赤くなっている気がして、先輩から目を背けた。



「梨子ちゃんだってさ」


「え?」


「知宏と付き合ってんでしょ?」


「違いますよ、彼氏じゃないです。ただの幼なじみで」


「でも、知宏がサッカー部だから、マネージャーになったんでしょ?男子苦手っぽいのに、わざわざ」


「違います!私がマネージャーになったのは」

 


先輩があまりにも見当外れなことを言ってのけるから、思わず声を荒げて勢いで白状しそうになったけど、直前で止めた。

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