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「帰り、送るから」
部室にボールを片付けながら、浅野先輩が私を見ないまま話しかける。
暗いから見えにくいけど、毎日使っている場所だから、大体の位置は分かる。
切れた蛍光灯を顧問の先生が代えてあげると言ってくれた時から、優に一ヶ月は経過している。
「えっ、そんな、大丈夫ですよ。先輩、電車通ですよね?うち、駅の反対方向だし、そんなに近いわけじゃないし悪いです……」
「遠いなら、なおさらだろ。暗い中で女の子ひとりで帰したくないし」
……。今、なんて言った?
聞き違えでなければ、浅野先輩が私を女の子扱いしたような……。
「普段は、知宏と一緒に帰ってんでしょ」
ありがとうを言いたかったのに、先輩が話し始めたことでタイミングをなくしてしまった。
「だ、だから、いつも一緒にいるわけじゃないですって……」
代わりに口から出てしまったのは、こんな可愛くない言葉。
言わなきゃ、ありがとうって……。
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