第31話

翌日、目が覚めて飛び起きると…隣に新次郎さんの姿はなくて…一瞬何もかも全て夢だったのでは?と本気で思ったが、、



見慣れない部屋の景色と乱れたシーツ…何よりも身体のダルさが昨夜この部屋で何が行われていたのかを証明している。




「………シちゃった、」



彼氏でもない男の人と身体の関係を持ってしまった…と、誰に対してか分からない罪悪感、、というより後ろめたさみたいなものを感じた。




掛けられていた布団から出て、ベッドの下に落ちていたバスタオルで身を包んで寝室を出てみるも…人がいる気配がまるでない。




リビングの壁に掛けられている大きな壁掛け時計が午前7時を指している。どうやら新次郎さんはもうこの家を出ていってしまった後のようだった。





ダイニングテーブルの上に一台のスマホが置かれているのが目について、そっと歩み寄ると…



【 俺、専用 な? 毎日持ち歩けよ、ツム 】




と手書きのメモが添えられているのをみて…まず思ったのは"字が綺麗だな"という点。その次にスマホを手にしてみて連絡先のページを開けば"家主サマ"と登録されているのを見て…用心深い人なんだなぁと、また好感が持てた。





お互いに知る必要のない情報は要らない、ということだ。私の所有するスマホの番号は要らない…フルネームを知る必要もないし、教える必要も無い。




家主と契約者─…いや、下僕?セフレ…?




私たちの関係性に名前なんてものはおそらくない。彼に許しを得るまで、彼に従うまでだ。

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