第27話

家を出た私が向かったのは、会社の最寄り駅


どこかで期待していた


もしかしたら冬弥に会えるかもしれないと


「お客様お似合いですぅ!」


『そうですか?』


端から端まで駅ビルを練り歩いた


日が暮れてきた頃には、両手いっぱいの紙袋を抱えていた


『ちょっと買い過ぎちゃったかなぁ…でもいい勉強になったと思えばいいか…』


久しぶりの大量買いにつかれた私は、ビルの中のカフェに入って休憩する


温かいジャスミンティーの香りにうっとりしていると、隣の席に座った若い子たちの会話が耳に入る


「まぁぢ冬弥かっこいい!」

「冬弥は最強だけど、やぱblack outが最高」


冬弥…やっぱり人気だな


「あたし冬弥になら何されてもいい」

「そりゃそうっしょ!都合いい女でも全然いい」


世の中の女性はそう思うのか

都合いい女…か


そんなふうに思えたら、こんなに考えなくて済むんだけどな


「嘘でもいいから好きって言われたいぃ!」

「間違いない」


あの日の冬弥の顔が思い浮かぶ

私に好きだって言った冬弥の瞳


嘘でもいいから…か

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る