第8話

「女神、大丈夫か?急に動いてはいけない。」


「…いた〜い…、薬効かない、クラクラしてきた…」


女神は小さくて、白い額から冷や汗をたらしていた。俺がハンカチを取り出そうとしたと同時、女神は

ベンチに力無く横たわってしまった。


「おいっ、女神」


「…もうダメ。」


俺は女神を横抱きにして抱き上げた。

近付いてわかったが、女神はシャボンの香りがした。女神はもう、抵抗しなかった。

俺は女神にバレないように最大限の鼻呼吸で女神の

香りをたくさん俺の体内に入れた。


「女神、家は近いのか?」


「…駅までの途中にある橋の前の茶色のマンションです。1階がコインランドリーの…」


「それならわかる。そこまで運ぶから少しでも身体を休めていろ」


「…すみません」


女神は消え入りそうな声で答えたきり、瞳をとじた。


(まさか女神のマンションが俺の通勤場所とはな、)


ふむ。これはもはや、運命だ。

運命の赤い糸の相手に出会えるとは。

神に感謝だな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る