第28話

「三ヶ月だ」



「っはい…?」



「三ヶ月過ぎたら、マジで容赦しねえからな」







泰司さんとこんな会話を交わしたのは、確か屋上だった。


そこには翡翠さんもいて、





「泣いた痕、すげえな」




って、親指で、頬を拭われて、身体が固まるほど驚いたことも覚えてる。



あれから、あっという間に時間が過ぎた。


あっという間だけれど、みんなと過ごした時間は、あたしにとっては凄く濃くて、深くて、


きっとこの先、忘れることはない


賑やかで、眩しくて、とても尊い、大切な時間。










「何してんのトップ」



日差しの差す場所から、アカネくんが声をかける。



室内にいるあたしは、その声にハッとした。




「ま、前にですね……来た時…その、む、虫の死骸が……、たくさん……いてですね…だから…」




申し訳ない顔でそんなことを言うけれど、本当はそんなんじゃない。



光の差したそこで、アカネくんのベージュ色の明るい髪の毛が透き通るようにしてさら、と揺れた。





「そこには……」



陰にいるあたしは言い淀む。


どうしてこんなに躊躇ってしまうのだろう。


何をこんなに、〝そこ〟へ行くことを申し訳ないという気持ちになっているのだろう。







「大丈夫だよ」



「っ」



「来て」



アカネくんがまるで着地するようにあたしの前に立ち、両手を掴んだ。


そして有無も言わさず、光の下へ連れ出してくれる。





「っ、」



「ね?」



「!!」



眩しくて瞼を閉じて、開いた視界の先。


広がったのは、虫の死骸も、ゴミも何一つない、綺麗になった屋上だった。






「丸岡さんたちがね?ここ掃除したんだって」



「丸岡さんたちが…?」



「多分、誰かが綺麗にしようって声かけたんだと思う……たぶん、冬馬さんか翡翠さんあたりかな?なんかやりそう」



「そ、そうだったんですか…」



「どう?」



「え?」



首を傾げて、ただそれだけを言ってあたしを見るアカネくん。



あたしは今一度屋上を見回してから、

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