第6話

「…………どうして、俺に聞く?」



「冬馬さんは、俺の元いた〝世界〟に近いところにいるからです」



「……元いた〝世界〟、ねえ」



「どうだろうな」と、目を逸らしながら、冬馬さんは立ち上がる。






「それに、」




背中を向けて、棚をいじりだす冬馬さんに投げかける。


片柳は静かにゲームをしていた。



俺がここ数日、姉には勿論のこと、景虎さんや近衛、周りの人たちには何も言わずに、調べ上げたこの情報は、





「〝久東院〟に一度、在籍していたことがある冬馬さんなら知っていると思いました」



「…、」



きっと真実だ。


その証拠に、その細身の背中が動きを止める。





「…翡翠さんのことも、………あの人も、元は久東院の人でしょう」



「……なんで、知ってんだ」




振り返った冬馬さんが、眉根を寄せて、俺を睨みつける。


その髪色に似た灰色の瞳を、ナイフのように光らせて。




「俺にだって伝手はあります」



「……」



「……」



「…………お前、小宵と全然似てねェな」



「そうですね、よく言われます」



「案外食えないタイプだろ」



「それは…言われたことないです」



淡々と答えていく俺を、冬馬さんは不機嫌な顔で見ている。



そのまま無言で、暫し時間が過ぎた後、冬馬さんは溜息を吐いて舌打ちをした。





「わァったよ、仕方ねーなァ」



「…」



「お前の質問、答えてやる。……でも今は時間がない、俺はまたここを出なきゃなんねェ」



「どこか行くんですか」



「まァな」



頭を掻く冬馬さんは、棚から取り出した服を持って軽く欠伸をする。


そして、通り過ぎる際に、「ああ、そうだ」と。




「もしも急いで知りてェなら、お前も来るか?」

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