第5話

「冬馬さーん、ゲームしていい?」



先に部屋に入っていた片柳が、空気も読まずに呑気にそんなことを言ってきた。




「勝手にしとけ」



「冬馬さんもやろうよ~」



「今度な」




冬馬さんは俺の隣を過ぎて、テーブルのある方へ向かう。


俺は一度、ゲームの準備をしている片柳に目を向けた後、冬馬さんの後を追う。


そして、既にテーブルの近くにある椅子に腰掛けていた冬馬さんに向かって、俺は頭を下げた。





「俺の家にくるなんて珍しいじゃねェか」



「……突然、押しかけてすみません」




顔を上げれば、軽く右口角を上げた冬馬さんと目が合った。




不思議な感覚だ。


自分がこの人とこうやって向き合うことがあるとは、今まで考えたこともなかった。






「単刀直入で申し訳ないのですが、冬馬さんに、いくつかお聞きしたいことがあります」



「……」



「八神綾人は、八神グループのご子息で、久東院高校の全体を牛耳っている。東の地域だけでなく、港南高校にも手を出して、……今はここ一帯を支配して、街での裏取引を拡大しようとしている……これは間違いないですか?」



冬馬さんが、肘置きに頬杖をついて、一度瞼を伏せた。




「それを聞いてどうする?」



すぐ後、その髪色と同じ鋭い目で見られるけど、俺は表情を変えずに続けた。






「俺なりに出来ることを探しています、教えてください」



「…………」



じっと、黙ったままの冬馬さん。


静寂が響き、少し離れた所で片柳がゲームのコントローラーをいじる音だけが聞こえる。

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