第4話
≪……はい、どちら様でしょうか?≫
「すみません、神山冬馬さんの学校の者なんですが…、今そちらに…」
「あ、冬馬さんだ」
片柳のふとした声に、思わず顔を上げる。
左を見ると、私服を身に纏った神山冬馬がこちらに向かって気だるげに歩いている所だった。
俺から見ても整った綺麗な顔が、眠いのか不意に出た大きな欠伸で歪んでいく。
「………あ?」
「こんにちは冬馬さん」
冬馬さんがこちらに気付いたのに間髪入れず、片柳が声をかける。本当に無遠慮な男だ。
冬馬さんは片柳から視線を俺に移して、ほんの少しだけ目を眇める。
珍しいヤツが来た、とその目が言っていた。
軽く会釈をして、
「少し時間いいですか?」
冬馬さんは少々長めにこちらを見た後、「入るぞ」と顎先で家の方を指していた。
「で、何の用だ」
部屋に足を踏み入れた瞬間、少し後ろにいた冬馬さんが短く口にした。
糸をピンと張り詰めたような空気が背中に纏わりついた気がして、振り返る。
涼しげな整った顔が、こちらを静かに見ていた。
しばらく見ない間に少し雰囲気が変わった気がする。
あの人と、翡翠さんと、また違った、
不思議な空気が、この人の周りには漂っている。
この人、時々言動が突拍子もないし、おかしな行動をするけど、
何も考えてない、ってわけじゃない。
恐らく頭がキレる人だし、
越えてはいけない〝一線〟はきちんと守る人だろう。
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