≪彼らの閲歴≫

第2話

姉がこの有松北高校のトップである期間が、あと一カ月足らずで終わる。


そろそろ夏休みにも入るし、先のことを考えて行動した方がいいだろう。


休み中はお金を貯めたいし、勉強もしなければならない。



その間に、〝トップでいなければならない期間〟というのは終了となるけど、



………姉は一体どうするのだろう。



景虎さんに聞いたけど、トップに決まってから三ヶ月経った後は、一番最初の挑戦者と勝負して、その地位を守らなければならないらしい。



前にやっていた、あのくだらない〝バトル週間〟で優勝した人が、景品として最初の挑戦者になれると言っていた。



この前の優勝者は、あの人だ。





神山冬馬さん。













「ねーねー水波お願いだから太鼓の達人してこうよー」



「……」



「だったらせめてマリカー。それかもういっそプリクラでもいいから俺と勝負しようよー」



「ついて来るなよ。………って言うか、プリクラで何を競う気なの」



「えー?そりゃあ…、どっちがデカ目になれるか?とか?……あ、俺、こうみえて結構目ぇでかいんだー。……ホラ!!!」



「……」



なんなんだ、こいつは。



自分の目を指先で大きく開いて、この上なく奇妙な形相で見てくるのは、片柳茜という別段仲良くもない同学年の男だった。


俺は何と言うわけでもなく、間抜けな男の顔を呆れた目で見る。




「うーわ何その顔。くだらないとか思ってたでしょ?思ってたよね?水波ってそういうところモテないと思うホント」



「………片柳って一日一回は人にマジうざい消え失せてって思われてそうだよね」



「大丈夫大丈夫。俺ってば人気者だからそんなこと思われたことナッシング」



「……」



「あ、またそうやってすぐ無視するー。まあいいけど。今日は水波が俺と勝負してくれるまで勝手について行くもんねー」

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