第2話 廿二日に、

(滞在地)大津・舟戸


(原文)

廿二日に、和泉の国までと、たひらかに願ひたつ。

藤原のときざね、船路なれど馬の餞(はなむけ)す。

上・中・下、醉ひ飽きて、いと怪しく、潮海のほとりにてあざれあへり。


※和泉の國までと

「和泉の国」は、現在の大阪府。

それまでは、暴風による海難事故、難破、漂流、海賊の危険もあるので、「とにかく和泉の国まではと」、航路平安を願った。

※藤原のときざね:伝未詳。

※船路なれど馬の餞(はなむけ)す。

「馬の餞(はなむけ)」は、「馬の鼻を行先に向ける、旅の平安を祈る」が原義。当時は、送別の宴会で、お餞別(金品)を頂いたの意味。

※いと怪しく

酔っぱらって、ヘベレケになってふざけ合って

※潮海

海。淡水は「淡海」

※あざる

「ふざける」の意味。

「ふざけたことをする(とんでもないことをする」から、酔って嘔吐の描写を感じさせる。


(舞夢訳)

二十二日の日になりました。

とにかく和泉の国までの航路が平安でありますようにと、(船首に祀られた神様に)、御祈願をいたしました。

藤原のときざねが、「船旅ではありますが、馬の餞(はなむけ)といたしまして」、とお餞別の品々(酒や土佐土産)を届けに来ました。

送られる人も、送る人も、身分の違いを越えて(無礼講で)、ひどく酔っぱらって、潮海のほとりで、ふざけたことをし合っています。(吐き散らしている)



現代人のスマートな酒の飲み方ではない。

「吐くまで飲む」

そこまでして飲んで、別れを惜しむ気持ちを示したのだろうか。


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2024年9月28日 09:00

土佐日記 舞夢訳 舞夢 @maimu

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