第7話 異変確認

蓮がヤカフ村の異変に気付いたのは、村を視認できる距離まで近づいてすぐのことだった。


道中、雄大な自然とそれに連なる豊かな緑の香りにの中に、血生臭さを感じたのだ。

村を見つけたという喜びよりも、鼻腔を刺激する臭いに注意を取られた。


「なんだ、この臭い…」


確認するようにもう一度鼻で息を吸い込む。


やはり血生臭い臭いは消えることはなく、気のせいではないことを悟った。


と同時に、先に見える村を見つめる。距離にして1㎞といったところだろうか。


目を凝らしてさらに見つめる。


すると、砂埃と黒煙が混ざったような奇妙な煙が上がっていた。


「…臭いの発生源はあそこか…」


小さく呟きながら、徐にコンソールを呼び出し、地図を開く。輝のいる位置を示すピンを中心に、そのすぐそばに『ヤカフ村』の表示がある。


「やっぱりあそこが目指していたヤカフ村か…ん?」


目の前に見える村と、自分の目指していた村が一致していたこと確認すると同時に、あることに気付く。


「さっきまでとは村の表示が異なるな…より詳細になってる?」


以前、地図で村を見つけた際には、村の位置と名前しか表示されていなかったが、今は村を強調するようなエフェクトが見られる。


よくゲームなどでみられる、『ここをタップしてね!』というような表示の仕方だった。


「新しい情報か何かが更新でもされたんかな?」


と、深く考えすになんとなくそのエフェクトをタップする。


すると、村の表示が拡大され、村の全体マップがコンソールを埋める。


「なっ!?」


村の全体マップが表示されたことに驚いたわけではない。


「この赤いマーク…オークだって!?…」


村のマップには赤い点が数十個点灯していた。


その点の上には、『オークLv10』という表示が出ていた。蓮は察したように、バッと村のある方向を見つめる。


「あの煙、オークに襲われたものだったのか!」


急かされたようにマップの操作を行う。


オークが表示されていたということは、村人も表示されていると思ったからだ。しかし、村人の表示を確認することはできなかった。


「村人だけ表示されないってことはないだろ?ってことは、もう殺されちゃったってことか?」


蓮の眉間に皺が走る。


マップを上下左右に移動させる。


すると、マップの端に青いマークが一瞬表示される。マークがあったところに地図の表示を合わせる。


すると、数十のマークが密集していることに気付く。


「生き残りか!?一か所に集まっているということは、避難しているのか…」


再びマップを操作して、オークがいた場所を表示する。


「オークの周りにそれ以外の者がいる様子はない…ということは、オークを倒せるような人はいないということか…」


そう、物耽っていると、避難していると思われる村人たちがいるところに、数体のオークが向かっていることに気付く。


「っ!?まずい、このままじゃ…」


とりあえず、あの村人たちを助けなければ、と身体が動く。


蓮の強化された身体能力から発揮された走力は凄まじく、文字通り、地面を蹴り上げて走り出す。まるで空中を飛翔しているような速度で村人のいる場所へと向かっていった。

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