第2話 青龍
レイド山火口に向かう山道に三つの人影。
一人の男は金髪碧眼の魔導士。
名をアダム。
もう一人の男は黒髪長身の魔導士。
名をジュラ。
最後は茶髪の女魔導士。
名をマリー。
いずれも帝都にある魔導士学院の学生である。
アダムは学院の首席で火魔法が得意な魔導士。
ジュラもアダムと同様に優秀な雷魔法が得意な魔導士。
マリーは簡単な治癒魔法しか使えない『落ちこぼれ』魔導士。
三人の今回のお目当てはレイド山火口近くの洞窟に棲むという青龍ダコスエイド。
嘘か誠か大魔導士ダコスエイドが変化した青龍がその洞窟に長く棲んでいるという。ここ数年動きが活発で近辺の街を荒らしているらしい。
困りかねた帝国は多額の懸賞金をかけて青龍討伐を図るが、いずれの冒険者もこの青龍には手を焼いているという。
名前の通り氷魔法が得意な龍で非常に強力な上に追い込むと火口を通り空に翔んで逃げてしまうらしい。
そういう噂を耳にして卒業間近の三人は腕試しに青龍討伐のために帝都を旅立った。
ジュラが雷魔法を詠唱する。
その杖から青き稲妻が放たれて閃光と轟音を伴い、青龍ダコスエイドの背後の壁に直撃して壁が崩壊し、火口へとつづく穴を塞いでいく。
次いでアダムが火魔法の詠唱を始める。
その杖から真っ赤な火球が放たれて轟音とともに青龍ダコスエイドの右目に直撃する。
「グアー」
青龍ダコスエイドはのたうち回る。
「ジュラ! 雷魔法で追撃をしろ」
アダムが叫ぶ。
ジュラが雷魔法を詠唱し、その稲妻が今度は青龍ダコスエイドの右目をかすめて右脚に直撃する。
「おのれ・・・・・・」
青龍ダコスエイドの氷魔法が炸裂する。
前のめりになっていたアダムとジュラの体が氷のように凍てつく。
青龍ダコスエイドは波状攻撃をかけ、アダムとジュラを瀕死の状態にした。
「マリー! 早く治癒魔法を」
青龍ダコスエイドの波状攻撃を受けアダムが叫ぶ。
「ハ、ハイ」
マリーはつたない口調で治癒魔法の詠唱を唱えた。
マリーの持つ杖に光が灯り、その光がアダムに向かって飛んでいく。
その光に傷ついたアダムを包んでいく。
「こっちも早く!」
瀕死のジュラも叫ぶ。
マリーが再び詠唱を始めるとその杖に光が灯る。
傷だらけの青龍ダコスエイドが後退をしようとしたが、火口へとつづく穴が塞がれていたため再び三人に向かいなおした。
マリーの杖から光がジュラに向かった。
その瞬間、傷だらけの青龍ダコスエイドが咆哮した。
「グオー」
青龍ダコスエイドのブレスが三人を襲う。
三人が氷漬けになった。
ゴーン
氷漬けになった洞窟内に時の鐘の音が鳴り響く。
洞窟内の氷が消滅し、三人の傷が完治する。
「敵である我が身まで治癒するとは。ハッハッハッ」
青龍ダコスエイドが三人を笑い飛ばした。
「ヒェー。わ、私の治癒魔法じゃない」
マリーは戸惑いながら物陰に隠れる。
ゴーンゴーンゴーンゴーンゴーン
再び洞窟内に時の鐘の音が鳴り響く。
何かに気づいた青龍ダコスエイドが慌てふためいて叫ぶ。
「だいま……」
青龍ダコスエイドは消滅した。
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