第2話 夢の国のお出迎え
それは突然だった。
”バーンッ! バーンッ!”
どでかいタンバリンの音が辺りの白壁を震わせると、気を失っていた三人は一瞬で目が覚めた。
「ようやく起きたわね、来客者さん」
エプロン姿のあるラッコの叔母さんが腰に手を当てって言った。
「いったいなんでしゅかー!」
モカがそう言うと、
「何だなんだー、どうなってんだー!」
プーもびっくりしてベッドで腰を上げた。
「あ、あなたは誰なの?」
めん玉を大きくしてラリーが聞いた。
「私はこの城の召使い、バーバリーと申します。見掛けからするとあなた達は外界からの来訪者ですね」
「――来訪者、そうです。ここはどこですか?」
ラリーがそう聞くと、
「ここは夢の国、ナイトブリーゼの世界にある城、フリーダムキャッスル。で、この部屋は安らぎの間です」
バーバリーは更に
「ブリーゼ界では一匹、あるいや一頭のことを<一氏>と言います。ですからあなた達は三氏と呼びます。そこの子犬から自己紹介をお願いしたいわ」
「おらの名はプーだ」
「私は熊のモカ」
最後に、
「――ぼ、僕は猫のラリーです」
あやうくラリーは<人間>と言おうとした。
「よろしくねご三氏さん。私はこれから会議室の掃除が待ってるの。それでは失礼を」
バーバリーはそう言って部屋を出ていった。
「はー? 待て待て。プーにモカ、お前たち喋れるんだね!?」
ラリーは現状にようやく気づいた。
「当たりまえだプー」
「そうでしゅよ、当然でしゅよ」
二氏がそう言うと、
「うわーい、ぬいぐるみと喋れるなんて夢みたいだー!」
ラリーはその場で飛び跳ねた。
「それにしてもラリー、お前はよくおらを枕にして寝るプーな、それいい加減やめて欲しいプー」
「それはプーを枕にしたら気持ちいいからさ、ふんわりしてね」
さらにモカも、
「ラリーはあたいを抱いてアル中って言ってるでしゅ。私は可愛い小熊でしゅよー」
「だって僕は父さんがいつも酒で酔ってるから、モカについ当たってるんだよ」
「ひどいでしゅ、それでぬいぐるみのあたしに説教してたでしゅか?」
「ああ、ごめんごめん。みーんな僕が悪いよ」
子猫になったラリーは茶色く丸いしっぽを揺らした。
「それにしても凄くきれいなところでしゅね、ここは」
三氏が辺りを見回すと、純白の壁には等間隔にロウソクが掛けられ、床には青い絨毯が敷き詰められていた。辺りの空間には砂粒よりも小さい光がちりちらと輝き、風に流されて光の川を創り上げている。正に光の楽園だ。
「皆さん、初めまして」
中に舞い、羽をパタパタしながらある生き物が声を掛けてきた。
「君は誰?」
ラリーが問うと、
「私は妖精のマリアです」
マリアは手のひらにすっぽり乗っかるほど小さくて緑色の光を放っていた。
「マリアと同じやつがここにはいっぱい飛んでるプー」
「そうですよ、この世界は多くの妖精たちが集っているの」
「ところでマリア、あたいおなかすいたでしゅ」
モカのお腹がぐるぐる鳴いていた。
それでラリーは、
「えー、ぬいぐるみがお腹すかすなんて!」
「その、ぬいぐるみ、って呼び方はやめてくだしゃい」
「ああ、わりい。つい……」
「ふっふ、面白い氏たちね。さあ、これから王様に謁見してご挨拶をなさい」
「おうさま? その方がこの国を治めているというプーか」
「その通り。この城、フリーダムキャッスルの王にして夢の国、ナイトブリーゼを治める支配者です」
その時だった。
「皆さま、王が謁見の間でお待ちです。さあこちらへ」
鎧に身をまとったカエルの騎士が意気揚々と三氏を迎えに来た。
「分かりました。よし、まずは王様に会うとしよう」
そして三氏はその場を後にした。
銀色のワンダーランド~ぷーとモカとラリーの冒険~ 岡本蒼 @okamotoao
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