第31話

「あ、変な意味ではなくて、最近よく早起きしてるでしょう?だから少し気になっちゃって……責めてるわけじゃないのよ」


「……ね、むれて、ます」


「……そう」


飾利さんが頷く。あたしの隣に座った伊吹が横目でこちらを見て、また同じように手元を眺めていた。


少し沈黙が続いたあと、今度は「小宵ちゃん」と春明さんが口を開く。



「小宵ちゃんは、この家は好き?」


「……ぁ、」


「べ、つに変な意味はないんだけどね!?好きか、嫌いか、それだけでいいんだけど……えと、」



慌てたように言う春明さんに、「なんであなたが自信なさげになるの?」と飾利さんはくすくすと笑っていた。



「……あの、あたし、」


「ん?」


「に、もつ……まだ、まとめて、なくて」


膝の上で握っている拳の中で、汗が滲んでいた。


「すぐにまとめてきま、す」


髪の毛で隠れた視界の先で、春明さんが何かを言いたそうに口を開いた後に飾利さんがそれを制して、「荷物をまとめて、小宵ちゃんはどうするの?」と。



「ずっと、なにも、してなくて……ごめんなさい、すぐに、で、でていき、ます」


「出て行くの?この家を?」

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