第30話

「何してるの?」や「外行く?」や、どうにかして外の世界へ連れ出してくれる。


そんな中で、あたしはついに春明さんたちに呼ばれた。




「あ、小宵ちゃん。ここに座って。伊吹も呼んでくれてありがとうね」



呼ばれた部屋へ向かうと、春明さんと飾利さんがソファに並んで座ってあたしを待っていた。


どく、と心臓が鳴る。なかなか一歩が踏み出せなくて、その様子を見ながら息が浅くなる。


母はいなくなってから、あたしがここにいる理由はない。


それは子供のあたしでもわかっていた。出ていけ、と言われてしまえば、それまでだ。


当然の報いかも知れない。幸せなんて願っちゃいけない。あたしは、ここにいちゃダメなんだ。




「……、」


「行かないの?」


あの、と声を掛けようとしたら、後ろにいた伊吹が首を傾げた。びくっと肩を揺らして振り返る。


そうして一度俯いて「ご、ごめん、なさい」と謝りながら、二人の前にある椅子に向かった。




「小宵ちゃん、最近ちゃんと眠れてる?」


椅子に座ってすぐに飾利さんに問われた。「ぇ、」と驚いたような声を零せば、飾利さんは慌てたように笑った。

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