第31話

「この間のナツキって人」



「え、」



「多分、龍蔵さんや三國さんの知り合いだとは思う」




あたしの悔しい気持ちを察したのか、伊吹がぽつりと、静かに続けた。



周りは騒がしい。


コノエくんは、強面さんたちとトランプ第二戦をしている。


御堂さんは買い出しに行っているらしく、そこにはいない。


トラくんはリュウくんたちの方へと戻って、ミクさんと何か言い合っていた。





「すごく挑発してた、龍蔵さんのこと」



「それは……」



さすがのあたしにも、わかった。




「でも、それだけ。俺には、相手を挑発させて楽しんでいる〝だけ〟に見えた」



「楽しむ…?」



「これは俺の予想だけど、きっとあの人、自分から害を及ぼさないと思う。害を出そうと促しはするけど、自分からは手を出さないタイプだよ」



伊吹は少し先の床を見つめたままそれを言う。



「そういう人だと思う」



不思議だ。伊吹が言うと、それが本当に思えるから不思議だ。

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