第29話

「―――…ん、姉ちゃん」



「え、あ!なに?」



「どうしたの、ボーっとして」



隣を見ると、伊吹があたしに声をかけていた。


急いで、「っなんでもないよ!」と答えると、伊吹は暫しこちらを見た後、




「この前のこと考えてるなら、無駄だと思うよ」



そう呟くように言った。




「えっ、」



なんでわかったの!?



そんな顔をしてしまうあたしに、伊吹は溜め息を吐き、「やっぱり」と。


その顔を見て、あたしはつい頭を掻いてしまう。


改めて、伊吹に隠し事はできないなと思った。





「ねえ、伊吹」



「なに」



「どうして、無駄だと思うの?」



「え?」



控えめに訊ねたあたしに、伊吹は不意をつかれたような顔をした後、



「だって、俺達には関係のないことだよ」



と。さらりと言って、伊吹はまるで一蹴するようにそれをあしらう。



関係のない、こと。

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