第28話

トラくんが冷たい声で言う。



リュウくんと同様、優しい声色が、彼女と話す時は、低く冷え切っている。



女の子に対して、こんな態度をとることがあるのか。



リュウくんもトラくんも……、初めて見るそれが、珍しくて、有り得なくて、



少し、怖くて、




二人のことを、酷く遠くに感じた。





「はぁ~あ、わかりましたよー。あー、怖い怖い。マツキタの人らってこんなに怖いの?ナツキ、初耳ー」



「………」



「この辺の高校の中じゃ、優しくて温和な方だって聞いてたけど、嘘だったのかなー」



くるり、と。踵を返す。




「ま。また会う機会もあるだろーし、今回はこの辺でかーえろっと。偶然会えただけでもいいしねー。じゃあ、またね?小野町クン。邦木クン」




その細い指先がこちらに向かって、軽く振られる。



振り返った綺麗な顔についたその口は、




「八依クンにもよろしくね?」



最後にミクさんの存在をチラつかせて、ナツキさんはその場を後にした。

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