第26話

「アンタ」




そんな彼を無視して、トラくんは彼女の前へ立ち、特に表情も作らずにただただ見下ろす。





「何を勘違いしてるかしんねーけど、リュウがちょっとやそっと変顔したところで、俺たちは離れやしねーよ」



「と、とら…変顔って……つか、痛かったんだけど……」



「うるせー。テメーは頭に血が上り過ぎだ」



「わわ。なになに?邦木クンて、結構仲間思いな人なの?優しい人なの?それともあれなの?偽善者なの?」



「あ?なに言ってんだアンタ」



「えー、だって今、小野町クンのこと助けたよね?」



「ハァ?なにバカなこと言ってんだ。俺がこんなヤツ助けるわけーねーだろ。こんな変態ゲス野郎」



「と、トラりん…ひどい…」



親指でリュウくんを差すトラくんに、彼は目元を押さえたままそんなことを言っている。

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