第31話

ヒロは自転車を投げ捨て

美嘉のもとへ駆け寄り

強い力で抱きしめた。




ヒロが来てくれた安心感からか…

子供みたいに声を出して泣きわめく美嘉。






「守ってやれなくてごめん…」



ヒロの怒りと悲しみが

体にひしひしと伝わる。




ヒロの存在に安心した気持ちと

ヒロに申し訳ない気持ちが混ざり合い

頭の中はぐちゃぐちゃだ




ヒロは悪くない。

汚れちゃったよ。

ヒロ…

美嘉汚れちゃった。




ヒロの胸の中で一時間くらい泣き続けていた。





「…落ち着いたか?」



「うん……」




顔を上げる。

真っ直ぐ前を見つめているヒロ。


その表情は悔しげで…。



「俺んち行くぞ。このまま帰せねぇから」



「うん…美嘉のいる場所よくわかったね…」



「俺の愛の力かもな!」





フフッと笑うヒロの笑顔の裏に

悲しさが隠れ見える。



わかってるよ。

無理…してるよね。



ヒロは詳しく聞いてはこなかった。

でも何があったか

きっとわかってる。




自転車に乗り、

ヒロの家に到着。




「部屋入って待ってて」



「おじゃまします…」




小声で呟き

ヒロの部屋にちょこんと座り込んだ。

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