第30話

震える指で

走り去る車のナンバーをPHSにメモする。




暗い場所が怖い。

明るい場所に行きたい…



明かりを求めて近くのコンビニへと歩き始めた。




でも…



ボロボロに破れて

血のついた洋服。


殴られて腫れた顔。



とてもじゃないけど

人前に出れるような姿ではない。




足を止めコンビニの裏にある白いベンチに

横たわった。




ずっと鳴っているヒロからの電話。


今すぐヒロの声が

聞きたい。




『今どこ?』



『……わかんない』



『わかんないってどうしたんだよ!泣いてんのか?美嘉今どこにいんの?言えよ』



『どっかのコンビニの裏…』



『近くになにある?』



『パチンコ屋がある…』



『今行くから』




電話は一方的に

切られてしまった。



ベンチに横になりながら星を見る。




ヒロに

嫌われちゃうのかな…。




目を閉じてヒロの温もりを思い出そうとしても


今はさっきの出来事が鮮明に甦って来るだけ。





それから

しばらく経ち…



キキーッ





自転車のブレーキ音。



起き上がると


少し遠くにはボロボロの美嘉を見て驚いているヒロの姿が

ぼんやり見えた。

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