第29話

車内に響く着信音。



この着信音は…

ヒロだ。



遅いから心配して

電話くれたんだ。





電話に出て

ヒロに助けを求めたい。


しかし二人の男が手足をおさえているため

身動きが出来ない。




着信音は

悲しく鳴り響いていた。





抵抗したら

もっと殴られる。


殺されるかも…




恐怖と悲しみの中、

唇を噛み締め

じっと耐える。




ヒロと初めて一つになった日…

あんなに優しく抱いてくれたのに。

何で今さら思い出してんだろ。


…涙が止まらない。







突然ピカッ光る眩しい光。



助けが

来てくれた…??



そんな淡い期待さえ

すぐに砕かれてしまった。




ニヤニヤしながら

耳元で呟く男。



「てめぇチクったらわかってるよな?今撮ってる写真ばらまくからな」





体が身震いする。



さっきの光は

助けなんかじゃない。



カメラの

フラッシュだったんだ。






「こんなんでいいだろ」


男達は笑いながら意味深な言葉を発し、


その言葉を合図に

車が動き始めた。




車は10分くらい走り、


知らない場所で車から捨てるように降ろされ、


…途方に暮れていた。

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