第26話
屋敷に到着し、通されたのは落ち着いた色合いの部屋だった。
部屋に入った正面が一面硝子張りの窓で、広大な庭園が眼下に見える。
その傍には椅子と小さなテーブルがあり、穏やかな笑みを浮かべた美しい女性が座っていた。
黒髪をきっちりと結い上げ、飾り気のない洋服を纏っている。
その膝には見覚えのある鈴と紐を着けた黒猫が一匹、のんびりと欠伸をしていた。
「奥様。お連れ致しました」
「ご苦労様、白木。お茶を用意してくださいな」
おっとりと微笑んだその人は立ち尽くす桜子に微笑み掛ける。
白木に促され近づくと、ふわりと華やかな香りが香った。
「初めまして、可愛らしい御嬢さん。藤ノ
立ち上がる千鶴子に桜子は慌てて頭を下げた。
「ひ、日崎桜子と申します……!本日はお招き、ありがとうございます」
「まぁ、お名前も可愛らしいのね」
ふふっ、とまるで無邪気な乙女のように手を組合わせて微笑むその姿に桜子は言葉を失った。
(か、可愛い……)
ぼうっとしながらそう思い、はっと我に返る。
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