第2-1話 透明になれる能力を誰かの為に

俺の名はメイト。孤児院出身のどこにでも居る様な冒険者の一人の男だ。 親に捨てられ偶々拾われたのが当時見習いのシスターだった。

あれから時が経ち見習いシスターは他のシスターのまとめ役となっていた。


「メイト あなたもそろそろ成人の儀が近いんですから、これからの事をよく考えるのですよ。」


「あー シスター分かっているけど、オレに何が出来るっていうだよ。」


「またメイトったら自分を卑下するのはやめなさい。メイトあなたやりたい事はないの?」


「んー 勉強も得意じゃ無いしコレと言ってねーよ!」


「困ったわねー。 そういえば昔は冒険者になるとか言ってその辺の棒を振り回していたじゃない。それならこれからでも大丈夫じゃ無いかしら?」


「冒険者!? 昔そんなこと言ったっけ? んー 冒険者ねー…」


「どうせいつもみたいに何も思いつかないんでしょうし、少しは真剣に考えることね。」


「冒険者かぁー んー」

それからメイトは真剣にこの先の事を考え始めるのであった。


「それと他の子供の様子見てちょうだい」

王都近くのこの孤児院は魔物の被害が少なくシスターは冒険者の大変さをあまり理解していないのであった。




あれから数年が経ちメイトも一端の冒険者となったが、あの時の冒険者への憧れは今はなくその日の報酬で酒場へ行きやっすい酒を飲んでは寝る生活を送っていた。 

今日もランクの低い魔物討伐へ行き酒場で安い酒を飲めるだけの報酬を手に街をぶらついていた。


「はあー 王都周辺はランクの低い魔物が多いから命の危険はねーが、報酬がなー… このままここにいても…。」

冒険者ランクの低い今の現状で他へ行ったとしても、今よりいい生活が出来るとは考えられなかった。


そんな事を考えながら街中を歩く、コレと言って目的地もない為武器屋を冷やかしに行ったりとし、そろそろ酒場でもと考えた時、ふと路地裏に目がいった。


「あんなとこに露店なんかあったか?」

いかにも怪しげな見た目だが不思議と興味を持った


「どうせ碌なもんないだろが、暇潰しになるだろ」

この時の選択がこの先大きな変化となる事をメイトは知らない。


「おーい! ここはなんの店だ?」

メイトはとりあえず露店のテントの中に声を掛けた


「…」


声を掛けたが返事がなかった。

だが何故か興味が湧いてくるので薄暗いテントの中に入って行く。


「ぉーぃ 誰かいるかーい。」

外から見るより中は意外と広く感じたがやはり薄暗い。 


「…」

そーと声をかけるが返事がない


諦めて帰るかと後ろを振り向くと肩に手を置かれ叫ぶ

「うわああー!  なんだいるんじゃなねーか!」


後ろを振り向けば老婆かジジィ分からないが老人がフード越しにコチラを見ていた。


「おっオイ ビビらすなよ!!」

虚勢を張って少し大きな声が出た


「ここはなんの店なんだ?あ!?」

未だ足が震えるがとりあえず声を荒げた


「ふっひぃっひぃ そー大きな声を出さんでも聞こえてるワイ ひぃっひぃ」

老人は怪しげに笑いながら答えた


「ここは人を占うじゃワイ ふひっ」


「占う?なんだそれ!怪しさしかねーな」

メイトは少し落ち着き訝しむ


「試しに占ってやるワイ ちとこっちへ来い。


「その占いってーのはいくらだ?」

手持ちは多くない。適当な理由をつけて帰ろうかと考える


「ふひひ 脅かした詫びじゃタダで構わんワイ さぁ〜おいでな」


メイトはタダと言われまぁーいいかと老人に着いていく。


「どれどれ んー ほうほう ふっふひっひ よかろう。」

なにやらブツブツと言い始めたかと思えばいきなり笑い出した


「お主孤児院じゃったろお?」


「あ? それがどうした文句でもあるんか?!」

いきなり言われ沸点に達したメイトは叫んだ


「いやいや、ふふ お主にコレをやろう。」

老人は何もなかったかの様にメイトの目の前に謎の液体の入った小瓶を差し出す


「んだこれ!!」

メイトは怒りのまま叫ぶが老人は聞き流しそのまま話し出す


「これはのぉー この先のお主にとって変化を与えるものじゃワイ。 この先これを飲めばありとあらゆる事が可能になる。多少の代償が伴うがそれをも超える力、富、名声が手に入るじゃろうのぉ。むろん使い方次第じゃかな。今回はまぁー特別にやるワイ。受け取れ!」


メイトは目の前の老人から小瓶を受け取ってしまう。怒りや怪しさがあったが何故受け取ってしまったのか自分でも理解出来なかった。


「さっ!もう行ったいった! ワシもやる事あるんじゃワイ」


メイトは老人に追い出される形で露店の天幕から出た。

そして今の出来事を考えながら元居た通りに戻ってきていた。


「あの老人なんだったんだ? それにコレ…。」

手の中にある怪しげな液体の瓶を眺める


「とりあえず酒場に行くか!」

考える事を一旦放置して酒場に向かうのだった




酒場で安酒をチビチビ飲んでいると冒険者仲間の男が近づいてきた


「よー!メイト調子どうだー?」

やたらテンション高く友人がやってきた


「んーあー ボチボチ普通だ」

少し考え事をしていたがありきたりに答えた


それからどーも友人は魔物討伐が上手くいきいつもより多い報酬を手にして浮かれてる事が分かった。


「たまにはオレがメイトに奢ってやるよ!」

今まで一度もそんな事したことないのにと思いながらメイトは有難く奢って貰う事にした。

それからの友人の自慢話がダルかったメイトはちょっとした悪戯気分で普段は頼まない様ないい酒を店員に注文して飲んでやった。

案の定友人気が付かずそのまま机につっぷしたのでメイト友人を置いて宿屋に帰る事にした。

メイトはめメイトでいい酒なんか飲んだこともない為普段の酔いとは違うく舞い上がる様な酔い方をしていた、そこでふと裏道の露店で手に入れた小瓶を思い出し、それをじっと見た後、小瓶の中身を飲み干した。

この時のメイトは考えられるだけの思考はなく、後になって後悔するのだが今は幸せなフワフワと天にも登る気持ちのまま宿屋の硬いベットに倒れ込みそのまま夢の中に旅立つのであった。




次回 目覚めるスキル

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