第1-1話 車椅子生活に嫌気がさし気がつけば異世界に
去年の秋紅葉の山道をバイクでツーリングしていると目の前に黒猫が飛び出してきた、咄嗟にブレーキを掛けたが派手に転けてしまった。意識網羅の中スマホで救急車を呼ぶことはできたのだが、その先の記憶はなく目覚めると知らない天井、綺麗な部屋、全身包帯のミーラ姿の自分。
しばらくするとナースの方が来て状況を説明された。 事故後病院に運ばれ、全身打撲、右膝から下が無いと言われた瞬間から先の記憶が薄れて何を話しかけてきたか曖昧な状況になり、車椅子生活が始まるのだった。
事故当時俺は大学卒業し社会人一年生でたまにはバイクに乗るか!と少し峠のほうに行くかと出かけた。それがその後こんな事になるなんて思ってもみなかった。 事故直後俺はバランス崩たバイクから落ち全身転がりながらガードレール直撃、バイクは暴馬のように暴走状態でガードレール向こうに大ジャンプし廃車。結果、その会社を自主退職し今は車椅子生活となった。あの時の黒猫よぉーっと叫べばいいのか、己の運転技術の無さを恨めばいいのやら…
事故からしばらくし自分と向かい前に進もうとする中ありとあらゆる障害が街中にあるのだと思い知らされている。今もまた、たった数センチの段差が車椅子の前輪阻むかのように立ち塞がり、かれこれ十分格闘したのち、ようやく乗り越えたこんな強敵たちが街中にはたくさんいるのだからイライラするのも仕方ないだろう。時には頼んでもいないのに親切心で車椅子を押して来る者が居るが押される側はいきなりであったり、ここじゃない感であったりとただの迷惑なんです!と心の中で愚痴る日々。
そんなある日、横断歩道の赤信号中見覚えのある様な黒猫が通りの向こうをテクテクと歩いて居るのを目撃した、初めはもしや!?っと思ったがここは街中だし、いるはずもないと心を落ち着かせるため鞄から水筒を出し一口。
またしても運が悪いのだろう、通りがかりの通行人がよろけて自分の乗る車椅子の方に突っ込んで来る。
「あっ! ちょちょちょっ!!まっ!」
更に運が悪い事に黒猫の登場に動揺していたのか車椅子のブレーキをかけていなかったのだ。
こちらに突っ込んで来る通行人の顔は蒼白していたが勢いそのまま突っ込まれた俺は車道に進んでしまった。
突然の出来事過ぎてパニックになった俺はある一点に目がいった、そこには先ほど思い違いだろと思っていた黒猫と目が合った。
ほんの一瞬だったが、パニック状態が治り車道から歩道の方へとと動き出したその時視界にトラックが迫っていた。
「にゃぁ〜」
猫の鳴き声と共に迫り来るトラックに跳ね飛ばされる中、スローモーションの様に過去の記憶と思い出が全身を駆け巡り一時の幸せな感情が俺を包んだ。
この瞬間俺は悟ることができた。
「あっ… 死んだんだ。」
不思議と恐怖を感じることなく目を閉じた。
再び目を開けると、トラックに跳ねられたはずの俺の横に立っていた。
(なぜ!? 俺だよな??)
疑問や不思議な感覚はあったが、死んだ事だけは理解できた。
次第に人だかりができ、近くを通りかかっただろう人が、色々叫びながら通行人達に指示を出していた。
それからすぐ救急車がやってくる。
俺は何かできるでもなく、意識をなくした自分の隣でそれを見ることしかできないでいた。
病院に運ばれ処置室に。それから家族がやってきた。
家族は誰も何も言わず放心状態で座っていた。
処置室から先生が出できて家族と話し合いののち母が崩れて落ちるよな泣き出す背中をただ見ることしかできない自分。
ふと足下を何かに触れられたかと思うと場面変わり、俺の葬式中であった。
自分の葬式を見るのは変な気分だと思いながらぼーっとそれを見た。
また足下に何かが触れる感覚があり下を見ると黒猫が頭を擦り付けていた。
「あっ! お前あの時の!!」
思わず叫んでしまった。 この時初めて声が出せると知った。
すると猫はまた「にゃぁ〜ン 」と鳴き俺を見上げて、「死んだ感想は?」と尋ねてきた。
ただの猫が死後付き纏ってきた事や、いきなり喋り出した事などでポカーンとしたが次第に怒りが沸々湧きあって黒猫を睨もうとすると、景色が一瞬にして変わり、宇宙のど真ん中に漂っていた。
周りを見渡せば一面の星々。太陽、銀河と先ほどの怒りはどこかへ消えてしまい呆然と眺めるだけに。
「君はバイク事故で死ぬ筈だった。でも僕にも分からないがそこで死なず生き残ってしまってね。」
黒猫が喋り出した事により我に帰り黒猫を見る事に。
「聞きたい事や怒りがあるが、何故バイク事故で死ぬはずだったんだ?」
もっと取り乱すかと思ったが不思議と冷静だった
「なぜと言われても、そうだったとしか答えられないよ。誰もがそうとしか言えないからね。 だから君の様な不思議な存在は興味が湧いて観察していたんだ。まっ、結果的に死んじゃったんだけどね。」
(…)
なんてこともない様に平然と話す黒猫に次第に不気味な何かを感じ始める
「そこでね、これからの君のことでね。」
「えっ… これから?これから何があるんですか?」
何かを感じとり自然と畏まった
「ん〜っとね。君の死んでしまう時期が狂ってしまってるから、元々の魂の循環の中には戻せないんだよね〜 う〜ん」
気がつくと黒猫は後ろ足で立っており腕を組んでウンウン首振っていた
「え!?俺… いや、これからまだ何かあるんでしょうか?」
目の前の状況が意味わからん過ぎる
「元々はあの事故で死んで、君たちの世界で言う輪廻転生する筈だったんだけど、君のようなイレギュラーは無理みたいだからどーしよっかなーって。 あっ!いっそのこと違う世界行っちゃう!?」
「違う世界??」
輪廻転生?違う世界?もう頭が追いつかず繰り返して返信するしかなかった。
「うん!そうしよう!!いい事思いついちゃった♪」
「え?あ…はぃ。」
一度に色々んな方が起きて完全に思考が止まった。
「とりあえず君の元居たとこで流行ってる科学より魔法が発展してる世界に送るね!てか決定だから!」
「え?え?? 決定なの?相談も何もないのに?」
少しは思考力が戻るが意味をなさない
「うん!循環の輪に戻れないしね♪」
「場所はあそこがいいかなぁ〜 ここをこーしてー あーしてー」
何も言えぬまま話が進むのを眺めるしかできないでいた
「よし、いい感じ! あっ!!」
普段の生活では感じたことのない嫌な予感がする…
「やっぱり君変なことになってるよ?」
「な、なんでしょうか…。」
猛烈に嫌な感じがしながらも尋ねるしか選択肢はない
「別世界に輪廻転生出来るのは確定なんだけども、君に魔力が存在しないんだよね。それに君の右足なんだけどあっちに行ったら無くなっちゃうみたいなんだぁ〜」
ずいぶんさらりと言われて思考力停止に陥る
「なんだか可哀想だから転生じゃなく転移にして君の乗っていた車椅子もマジックアイテムとして持っていけるよにするから、大変だろうけど人生楽しんでね〜」
「知らない世界で、片足なしの車椅子生活、おまけに魔力なし? はあー!!やってられるかー!!」
とうとうブチ切れて叫んだ
「とりあえず向こうに行っても困らない様に言語や読み書き出来るよにしておくからなんとかなるでしょ!なるなる〜」
黒猫が話を進める中ギャーギャー騒いでいた
「よし!いい感じになったし向こうに行っても頑張ってねー!」
いよいよ送り出される間際騒ぐのをやめ質問しようとしたその時背後にブラックホールが出現して、その中に吸い込まれるのであった。
次回、異世界に
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