第14話
「あれ、誰か私の靴知らないかー?。」
「あ、俺のもない。」
「う‼︎ なんだこのスープは⁉︎ まずい」
「だよな。いつもと味が違いすぎる、僕も残したよ。」
「大変! 急がないと遅れてしまう」
「もう誰よこんなことしたのはー」
神殿内の至る所で軽い悲鳴があがる。
今日は朝から騒がしい。
その騒めきは、風に乗ってマリーベルの室内にまで届いていた。
朝から賑やかね、何かあったのかしら。
私はぎこちない手つきで、身支度を整え終えると扉を開けて驚きの声をもらす。
「っ!きゃっ!」
驚いて思わず尻もちをついてしまったわ。
「花…?」
扉の前には、沢山の花が山積みにされていたのだ。
花を置く習慣でもあるのかしら?
昨日受けた説明の内容を、思い起こすも分からない。
不思議に思いながらも、積まれた花を手に取ってみる。
「きれい」
「マリーベルさま?どうされたのです?
この花はいったい…?」
通りがかったニコライに、マリーベルは挨拶をする。
「ニコライさま、おはようございます。
私も驚いてしまって。こちらでは扉の前にお花を置く習慣でもあるのですか?」
「いえ、そんな習慣はありません。マリーベルさま、他に何か変わったことは?
何もありませんか?」
ニコライは困惑の表情を浮かべている。
「え?ええ。多分何もないと思いますわ」
ニコライさまどうしたのかしら。
「そうですか。特に害はないようですので、花は後ほど片付けましょう。
今朝は、神殿内でトラブルが色々とありまして…
神官長の所へ、報告に行かなければならないのですが。
マリーベルさまをお一人にするのは心配なので、一緒に来てくださいますか?」
ニコライはそう言い終えると、マリーベルの手を取り歩き出した。
突然触れられた手に動揺する。
急激に手が熱を帯びる。
こんな風に男性から手を握られたのは初めてだった。
淑女としてはあるまじき行為。
でも、不思議と嫌ではなかった。
チラチラと視線を手に向けつつも、ニコライの速度に合わせて必死に早歩きをする。
「あの、ニコライさま? そんなに慌てて、どうされたのです?」
「杞憂だとよいのですが……侵入者かもしれません」
「えぇ⁉︎」
緊急事態かもしれないというのに、侵入者よりも私は繋がれた手の方が気になっていた。
別にニコライさまには他意はないはず。
そう分かってはいるのだけれど。
少し残念に感じてしまう。
昨日お会いしたばかりなのに、なんだか変な気持ちだわ。
ドキドキしていると、あっという間に神官長さまの部屋に辿り着き手を離される。
離れた手の温もりが、名残り惜しい。
「神官長、ニコライです。至急ご報告したいことがありまして。マリーベル様もご一緒です。」
扉越しに用件を伝えると、中から入室の許可の声が聞こえた。
私はニコライさまと共に入室した。
神官長は窓際に佇んでいた。
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