第13話 アーサー視点
「はぁ⁉︎ どういう事だ‼︎ 神殿だと?」
「はい。どうやらそのようです。」
補佐官のビルは淡々と応える。
「護衛もつけずにマリーベルに何かあったらどうするのだ‼︎ なぜマーティン侯爵は許可したのだ。
何も聞いていないぞ!
まずい!
神殿には若い男性も勤めているときく。
女性免疫のない者がマリーベルを見たら、虜になり自分のものにしたいと思う者が出てくるかもしれない。
本当にあの侯爵が許可をしたのか?」
なんということだ!
マリーベルと会ったのはつい先日のこと。
私に何の相談もなく神殿へ行っただと?
その報せを受けたのは、つい先程のことだ。
マリーベルの様子は逐一報告するように伝えてある。
万が一天使のようなマリーベルに何かあったら大変だからな。
間違っても監視ではない。
あくまでも本人に気づかれないように、見守っているのだ。安全対策だ。
なのに事後報告とは、どういうことなんだ⁉︎
「私もマリーベルさまの身に何かあっては一大事と思い、神殿へ護衛騎士の滞在の申し出をしたのですが…」
ビルに目をつけたのは学園の時だ。
状況を分析し、問題解決する能力に長けている。
友人でもあり、こうして今は補佐官として己の能力を発揮してくれている。
必要と判断した時は、私への相談なく独断で動く許可を特別に与えている。
そのビルの歯切れが悪いな。
「許可はとれたのだな?」
「いえ。神殿は権力が及ばない特殊な領域ですので、あっさりと断られました」
「はっ? 断られただと⁉︎
交渉もせずに、おめおめと帰ってきたのか?
ビル! 私がお前を補佐官にした時になんと言ったか覚えているだろうな。答えろ‼︎」
八つ当たりだとは分かっていたが、気持ちが収まらずにビルを怒鳴り続ける。
「自分の口から言うことは憚られますが、
「優秀だからだ」と、そのように伺ったと記憶しております」
どんな時も表情に出さないないビルは、私に怒鳴られようが眉ひとつ動かさずに答える。
「そうだな。その優秀なお前に任せていた結果がこれか?」
「申し訳ございません‼︎ 何度も交渉したのですが、神殿で騒動が起こったことは今ままでないから大丈夫だからと。
マリーベルさまは、自己修練を積まれるためにお一人で滞在されます。
護衛含めてお付きの者を許可することはできないと…」
「なるほど、神殿か…
少し厄介ではあるが。
今まで平和だったからといって、これからもそうとは限らない。
世の中何があるか分からないからな。
お前もそう思うだろう?
ビル! 腕の立つ口の堅い者を数名集めろ。すぐにだ‼︎」
「アーサーさま、まさか⁉︎ 」
「あぁ、そのまさかだ。神殿を襲撃する!
平和ボケした者達に、世の中の厳しさを教える良い機会だ。」
「アーサーさま、流石にそれはまずいかと」
あまり感情的にならないビルが、必死に止めてくる。
「なに、本当に襲う訳ではない。ちょっと忍びこんで軽い騒ぎを起こすだけだ。ちょっとした、イタズラさ。
さすがに侵入者が現れたら、考えも変わるだろ。
選別はお前に任せる」
「はぁ……承知致しました。」
もうどうなっても知りませんよ、とビルは諦めの境地だ。
「そういえば犬と━━」
神殿付近に、我々の存在に気づき追い払う女性がいましたが━━まぁ、彼女のことは、問題ないでしょう。
私のことを犬と呼ぶとは、心外だ。
このことは、貸しにしておきましょう。
「何か言ったか? ビル」
「いいえ、なんでもありません。失礼致します」
「待っていろ。マリーベル。」
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