第9話

エレベーターの中は無言で過ぎた。



あたしは、まっすぐドアを見つめる彼を観察していた。



色素の薄い整った横顔。

まつげはくるんと上向きで

鼻筋は綺麗に通っている。



毛穴の見えないキメ細かい肌に、少しくせのある柔らかそうな茶色の髪。



姿勢のいい体型。

あたしは別にチビではないけど、見上げないといけなかった。




チーン




レトロな音がして、彼に促されてあたしはエレベーターを降りた。



絨毯敷きの廊下。


目の前にある大きなドア。



「え…」(ここだけ?)



見渡しようのないフロアにあたしは彼を見るしかなかった。




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