第8話

「部屋へ案内します」



お姫様をエスコートするかのように自分の左手をあたしへ差し出す。



あたしが自分の手を置くか戸惑っていると

「これが規則ですから」と手を置くように促した。




ドキドキと心臓は高鳴り、全身から嫌な汗が出ている気がする。顔も多分真っ赤だろう。




だって…


この建物の中にいる人達の視線が全て自分達に注がれているから。



誰も何も言わず静寂の中、彼の革靴のコツン…コツンとゆっくり歩く音だけが響いている。



あたしはペタペタと小さな体をますます小さくさせて歩いた。





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