第7話 再戦

「先手必勝!!」


 そう言いながら彼女が最初に操ったのは中にボールが30個ほど入ったキャスター付きのボールカゴ。

 念動力テレキネシスの力で放たれたそれは車と同等か、時速50km程の速さでこちらに向かって来る。



 ——ボールカゴか。甘いな。流石にその程度なら収納ストレージに入れれば……



 収納ストレージに入れて無効化しようと考えたその時、それが不可能だと気付く。

 理由はカゴの中に入っているボールだ。

 目視でも5個以上のボールが入っている状態では容量を超えてしまうせいでカゴを収納ストレージに入れる事は出来ない。



 無効化が無理ならば避けるしかない。

 トレーニングで鍛えた脚力で横に飛び、なんとかボールカゴを避ける事には成功した……が、体勢を崩されてしまった。

 こんな分かりやすい隙を見逃す相手ではないというのに。



「避けたらいいってもんじゃないのよ。」



 避けたボールカゴが壁に衝突し横転した結果、中のボールが全て飛び出した。

 飛び出したボールは意思を持ったように空中で静止し、次の瞬間それら全てが俺目掛けて飛んでくる。



「悪いけどあんたの弱点を徹底的に狙わせて貰うわよ。あんたの能力『収納ストレージ』は5種という容量を超えるものは入れることすら出来ない。この攻撃はあんたにはどうすることも出来ないでしょう?」



 流石にお見事としか言いようがないな。

 ボールカゴにボールを詰め込んだ攻撃、そして他方面からの複数同時攻撃、どちらも収納ストレージの容量を超えている防御不可避の攻撃だ。

 現に俺はこの攻撃を防ぐ手段は持っていない。

 まあは、だが。



 ——早速あの秘策を使う時が来たか。



 俺はその場で高く飛び上がった。





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 ●麗奈視点



 あの男と出会ったのは2週間前。

 最初の印象はいきなり私に水をぶっかけて来たクソ野郎。

 1等級に認定されて以降、自分の超能力を過信した馬鹿に喧嘩を売られる事が多くなっていたからこの男もそいつらと同じだと思っていた…けど、少し違った。


 詳しく話を聞いたらどうやら水をかけたのは偶然だったみたいで私の早とちりだったけど、なんだか引くに引けなかったし、それ以上に諦め癖のついてるあいつの態度に腹が立って決闘まで吹っかけてしまった。


 正直、絶対来ないと思ってた。

 でもあいつはここに現れて、今この私と決闘をしている。


 あいつの目。

 この前とは違う、勝ちを狙ってる目だ。

 なんでたかが6級相手にワクワクしてしまってるんだろう?


 勝ちは確実、負けはありえない。

 絶対的な差があって万に一つも負けはない戦うだというのに、私は何故だかワクワクしている。


 流れは今のところ私の想定通り。

 なす術もなく防戦一方、このボールたちもあいつの能力じゃ防げない。


 ボールの弾幕を一斉に放つ。


 たかがボールとは言ってもここにあるのは全て特別製で普通より硬くできている。

 生身の人間がこれだけの球数を食らえば、相応のダメージが入るはず。



 ——さあ、このままだと何も出来ずに負けるわよ。



 この状況をどうやって解決するのか?

 それともなす術なく敗れていくのか?


 次の行動を注視していると、あいつは何故かその場でジャンプした。



 ——え?なんで?上からもボールは来てるしそんなんじゃ逃げれる訳が……



 そう考えていた次の瞬間、男はその場から姿を消した。



 ——えっ!?あれって……まさか瞬間移動!?


 気付いた時には遅かった。

 肩に何かが触れた感触。

 恐る恐る振り返るとそこにはあの男がニヤリとした笑みを浮かべて立っていた。



「俺の勝ちでいいよな。」

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科学と異能は工夫次第 杉ノ楓 @sou1234

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