第5話 トレーニング
藤原麗奈に襲われてから1週間
俺は今、ランニングをしている。
かれこれ30分近く走り続けているので息は乱れて肩は上下に動いている。
来週に迫っている再戦の約束。
ぶっちゃけ俺一人なら逃げてしまうところだったが、聡に「人としてどうなんだ?」と否定されてしまった手前、なんだか逃げ出しにくい状況に追い込まれてしまっていた。
あの日以降、俺はクラスの女子たちの荷物持ちを断っている。
まだ俺の中にも向上心とやらが残っていたのか、どうにも藤原麗奈の言葉が忘れられずになんとなくトレーニングを始めてしまった。
——まあ…戦うかどうかはともかく、能力を伸ばすこと自体は悪いことじゃないしな。
なんだか言うことを聞いてるみたいで癪だったので、こんな風に言い訳をして自分を納得させている。
ここ最近のスケジュールは
8:00〜16:30
16:30〜18:00 ランニング(北区を約20km)
18:00〜19:00 筋トレ(腹筋背筋腕立て等)
19:00〜20:00 小休憩、晩飯
20:00〜23:00
23:00〜0:00 風呂等の就寝準備後、就寝
結構みっちり詰まっているが、まあ寮暮らしの高校生なんてやる事も大してないのでこれくらいで丁度いい。
元々荷物持ちで鍛えられていたお陰かランニングも筋トレもそれ程苦じゃない。
どちらかと言えば問題は
——うーん、この前は一瞬だけど
真夜中の住宅街で俺は電柱に手を添えながら
女子高生と決闘をしたあの日、結局あいつは電柱の檻をそのままにして帰ってしまった。
助けを呼ぼうにもあの状況を見られて俺が犯人みたいに思われても嫌だし、なんとか逃げ出したかった俺は頑張って電柱を
片っ端から電柱を入れようとするが体にかかる負荷に耐えられず断念、それを何度か繰り返していると何故か負荷がかからない電柱があった。
ここぞとばかりにそこから抜け出した直後にまた負荷がかかり始めてすぐに吐き出したという出来事があったんだが……
——あれは能力のバグか?いや、違う。そうやって思考を放棄したら駄目だ。もっとよく状況を思い出して考えないと。
あの時、負荷を感じなかったのはたしか上空を覆っていた電柱を入れた時だ。
上空……もしかして浮いている物は重力を感じるまでに時間差が生まれるのか?
それなら時間差で負荷がかかったのにも納得がいく。
物は試しといきたいところだが、そうそう重い物が空に浮いてる訳ないし…
暫く考え込んでいたその時、閃いた。
試すには危険だが、成功すれば戦略の幅がかなり広がるアイデアを。
まるで子供の様に超能力の可能性に胸を踊らせた俺は、危険を顧みず試してみる事にした——その結果、アイデアは成功した。
——勝てる…これならあの
こうして時は過ぎて行き、遂に約束の日が訪れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます