第20話 詮索屋は嫌われる

「オメーは勉強知識だけの頭でっかちだから、他人をそれで無意識に傷つけそうだから言っとく!うちでは『過去』は詮索しないルールなんだわ」


 また、彼女は『特殊な部隊』の誠には理解できないルールを提示した。誠にはその言葉の意味が分からなかった。


「でも、それじゃあ分かり合えないじゃないですか?仲間でしょ、一応。『特殊な部隊』とは言え」


 そんな誠の常識的言葉にランはかわいらしい頭を横に振る。


「やっぱり、オメーは何もわかってねーな。アタシはクバルカ・ラン中佐。あの長い長い『遼南内戦』でアタシの国、『遼南共和国』が負けたのは、アタシがちたからだ」


 誠は過去を語るランの目に引き付けられた。その目は先ほどまでとは違う『鋭さ』を感じさせる色を帯びていた。


「だけどよー、そんな過去なんてどーでもいーじゃねーか。過去なんか気にすんな。目の前のリアルを信じろ。アタシはクバルカ・ラン中佐だ。そして、こーしてオメーを迎えに来た。それだけは事実リアルなんだ」


「リアル……ですか?」


 誠はランの言葉を繰り返しながら立ち尽くす。見た目に騙されてはならないことだけは誠にも分かった。


 彼女は『萌え』だが、それ以上に『百戦錬磨の老練な古強者』なのだと。


「そーだ。うちは『特殊な部隊』だからな。みんなうちに来た『理由』がある。だからそんな原因を聞かれたくねーんだ。会ったら、察してやれ、そして、それが嘘でも信じてやれ。そんだけだ」


 ランの行く手には黒い高級乗用車があった。


「それじゃあ……どうやって『仲良く』すればいいんですか?」


 誠の問いを無視してランは高級車の運転席のドアに手をかけた。


「それを察することができるかどーか。それがオメーにこれから試されるんだ」


 ランはそう言い残して開いた高級乗用車の運転席に姿を消した。


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