第72話 女神様かと思いました
「ユティ……。
母様って悪女なのかなあ……」
「? お母様は魔女では?」
「魔女なんだけど、悪女でもあるのかもしれないのよ……」
「???」
あの後。
馬車の中で私はナタリア様から、子供の前ではとても口に出来ないような
……まあ、右手の小指をひたすら舌でペロペロ舐められてただけなんですけれども!
『ぢゅるっ、れろ、れろっ……。
……いい、ディケー。
こんなコト、あの人にもやらないのよ。
……この意味、分かるわよね?
はむっ、ぢゅるるるっ……ちゅっ』
……舐め方が! 舐め方が、何か!!
ものすっごくえっちな感じだったからさあ!! 時々角度変えて基節骨の辺りから舐めたり、指と舌との間に唾液の橋作ってみせたり!!!
「(ナタリア様なりの愛情表現なんだろうけど……。
うぅ、果たして応えていいものなのかしら……?)」
私は養子とは言え2人の子供を持つ身だけど、未婚ではあるから誰とお付き合いしようが、まあ世間的に問題は無いっちゃ無いのよね(現にサラさんとは、そういう雰囲気になっちゃってるし)。
「(問題あるのはナタリア様の方って言うかあ……仮にも御領主様の若奥様ってのがなあ……)」
「ヴィーナに咲き乱れる百合の園!
御領主の若妻、護衛の女冒険者と熱愛発覚!!」
……みたいな感じで、センテンススプリングとかフライデーの格好の餌食になりかねない!
……仮にすっぱ抜かれでもした時は、た◯し軍団を率いてビートた◯しがフライデーを襲撃した時みたく、魔女軍団を率いて報復するしかない感じ!?
その場合、先陣を切ったそのま◯ま東のポジションは誰に担ってもらうのかが重要ね……すぐに手が出る、魔女セレン辺りが切り込み隊長としては適任かしら!?
「(……こっちの世界にもその手のゴシップ雑誌って、あるのかどうか分かんないけども!!)」
……まあともかく、こうも出会った女の人達からグイグイ迫られるのが続くと、私が何かした訳じゃないのに、自分が女の子の心を弄んでる悪女みたいに思えて来るのよ……ね。
「お母様は悪女ではありません。
……初めてお会いした時、女神様かと思いました」
「え、そ、そう……?」
「はい」
先にお風呂から上って早々に寝巻きに着替えたユティが、ソファーに座った私の膝の上で甘えながら私の身体にスリスリと身を寄せて、ハッキリとそう言ってくれた。
「……それに、例え悪女でも。
私がお母様の娘である事は、この先も変わりません」
「ありがと、ユティ」
まだ少し乾きの足りないユティの青い髪を風魔術の温風で乾かしてあげると、くすぐったそうに身体をよじって、ますます私に身を寄せて甘えて来る。
「お母様……」
「はいはい」
ライアが見てない所だと、まだまだユティも甘えん坊ね(ちなみにライアはまだキャルさんと一緒に入浴中)。
アグバログとの戦い以降は精神的に成長したのか癖の強いキャラ作りをするのも辞めて、普通の喋り方をするようになったけど……それでもまだ5歳なんだし、出来ればもっとたくさん甘えてほしい。
……その方が母様も嬉しいのです。
「(それにしても……女神様かあ)」
ライアとユティがディケーと出会ったのって、私がディケーに憑依転生しちゃう半年前の事だっけ?
私がこっちの世界に来てから約3ヶ月で、今が秋だから……ディケーが子供達を拾って養子にしたのって、今年の初旬くらいか……寒い季節にお腹空かせて、服もボロボロの状態で帝国領の廃墟をさ迷ってた所に救いの手を差し伸べられたら……まあ、誰でも女神様って思うかもね……。
「あ! ユティ、ずるーい」
ややあって。
リビングでユティとまったり親子の時間を過ごしていると。
お風呂から上がったライアがリビングへとトタトタ足を鳴らしてやって来る。
それを見たユティは一瞬ムッとした顔になるも、
「……仕方ない。交代してやる」
と呟いて、名残惜しげに私から離れて行った。
ここ最近は私が日中ブリーチェで
「偉いわね、ユティは」
「姉として当然です。お母様」
「もー、私の方がお姉ちゃん!」
「それはどうかな?」
「何さー!」
「はいはい、喧嘩はダメよ」
2人ともアグバログとの戦いを経てから精神的に成長したのもあって、ちょっと好戦的になっちゃってるのよね。
これまで殆ど喧嘩らしい喧嘩はしてなかったけど、最近は少し口論が多くなって来たように思う。
……いや、レジェグラと言えばライアとユティの姉妹の口喧嘩も見所の1つだったけども! 出来れば記念にスチルとか残しておきたいけど!!
……ここはグッと我慢の母様なのです。
「ライア。
髪を乾かしてあげるから、こっちに来て」
「はーい」
ユティに続いて、ライアの髪も風魔術で乾かしてあげなきゃ。
ユティに比べるとライアの赤い髪はくせ毛気味なんだけど、この所々ピョンと飛び出てる感じが可愛いのよねー。
キャラデザ担当絵師の
と、私がライアを膝に乗せて髪を乾かしてあげていると、
「ディケーさん。お風呂上がりました。
すみません、ディケーさんよりも先に頂いてしまって……」
「いいのよ、キャルさん。
2人のお風呂に付き添ってもらって、ありがとね」
「いえ、そんな!
お世話になってる身ですので!!
私こそ、洗い物をお手伝い出来ず……」
「いいの、いいの」
湯上がりのキャルさんも寝巻き姿になって、リビングへとやって来た。
……まだ居候2日目だけど、すっかりキャルさんも我が家に馴染んで来た感じあるわね。
「キャルさんの髪も乾かしてあげる。
さ、こっちに座って。
綺麗な髪なんだし、毎日ちゃんと手入れしなきゃ」
「は、はい……」
「ホント、ツヤツヤしてて綺麗よね……。
あ、もちろんキャルさんもだけど。
私が男だったら、絶対ほっとかないのになー」
「うぇっ……!?」
さあ明日こそ最後の魔導書、セヤケド断章を見つけなきゃ!
セヤケド断章対策のアイテムも準備は出来てるし、後は実戦で試すのみ!
あとキャルさんの新居も探さなきゃだわね。
背中を向けながら、何故かまたもカァッと顔を紅くして
「お母様」
「なに、ユティ?」
「……そういうトコロだと思います」
「えっ?」
一部始終を見ていたユティから、冷静に突っ込まれてしまった。
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