第50話
翌日、私は朝食を師匠と客人用の食堂で摂り、試験のある部屋へと向かう。師匠も一緒に来てくれるのは嬉しい。正直な所、お城で1人過ごすのは辛いものがある。知り合いも殆ど居ないし、常に見られて評価されている気分になる。
案内された部屋は10畳くらいの部屋だろうか。そこは机と椅子が置いてあるだけの質素な部屋だった。私が席に着くと、師匠は後ろにあるソファに腰を掛けた。勿論、護衛も従者もいる。落ち着かないわ。
後から部屋に入って来た3人の試験官。3人は王宮の人なのかな?初老のローブを着た男の人と30代と思われる男女。
「貴女がファルマ・ヘルクヴィストさんね。話は陛下から伺っています。では試験を始めますが、質問はありませんか?」
「ありません」
「では始めます」
試験官から何枚もの紙を渡される。
こんなに解くの!?
問題数の多さに焦りながらも1問1問確実に解いていく。算数は簡単なので全部間違わずに解けたと思う。歴史はタナトス様に教わった物が出ている感じだった。地名は怪しいけれど、なんとなくは解けたかなぁ。家政学?そんなの騎士団に付いていくのに必要?って思いながら解いたよ。刺繍の仕方やお茶の淹れ方が主な内容だった。
タナトス様が持ってきた本の中にあったのでなんとか解けたと思いたい。語学は大丈夫。薬草学も大丈夫。植物学やスキル学とか学問は沢山あって問題も結構難しかったよ。
これ絶対16歳の知識じゃないよね?って感じ。王宮の試験ってこんなに難しいんだね。あと、実技試験はダンスと魔法とスキルがあった。実技はすぐに結果が分かるのでドキドキしたよ。ダンスは駄目だった。だってさ、言い訳をすると10歳までしか貴族として暮らしていないのよ?体が覚えている訳がない。あーこの曲聞いたことあるわ、位の感覚でしかないんだもの。
試験官の人と踊った時に何度も足を踏んでしまって謝る事になったわ。後ろで師匠がフッって笑ってた。魔法は生活魔法なので火を出したり、水を出したり、植物の芽を出したりした。ばっちり出来たわ。調子に乗って小指の先サイズの火の鳥を出したくらいだもん。試験官の人達は興味深そうに見ていた。
スキルについては部屋の窓を開けて貰って近くにいる蜂を呼ぶことにした。蝶の方が綺麗だけれど、移動は遅いので呼んですぐ来てくれる蜂にしたの。間違ってもハエは呼ばないわ。蜂を呼んで回って見せたり、手に止まらせたりした。
試験官達はスキルの熟練度を確認しているように見えた。私のスキルの熟練度は高いと思うわ。だって蜂蜜持ってきてもらったり、植物まで案内してもらったり、護衛についてもらうためにずっと使っているんだもん。偶に使えないスキル(通称ゴミスキル)の人もいるらしい。
まぁ、そうよね。色んなスキルがあるんだもん。ごく稀に走る速さで歩けるスキルとか水をいっぱい飲めるスキルとかあるらしい。スキルの謎も多い。薬師スキルの師匠は当たりよね。
半日掛かった試験。終わる頃にはぐったりだった。試験官も疲れたよねきっと。試験の結果は後日陛下から聞かされるらしい。ダンスは再試験になるのかな。
そもそも今回は要らないよね?
どうなるんだろう。不安になる。師匠は大丈夫だよって言ってくれていたけど。
次の日、私はレンス王子と一緒にラーザンドに向かうために転移陣の前にいた。試験は合格したのか分からないけど。今日から配布された騎士服を着て過ごす事になった。私にはちょっと大きくて今すぐ袖を捲りたい気持ちになっている。
「師匠行ってくるね。お土産もちゃんと買ってくる」
「ファルマ気を付けて。フェルナンドの事だからファルマをしっかりと守ってくれると思うけどね」
私は師匠の胸に顔を擦りつけると、師匠は頭をポンポンと撫でてくれた。早く仕事を片づけてすぐに帰ろうと心に誓う。
「兄上、行ってまいります。兄上の大事な人は絶対に傷一つ付けません」
「レンス頼んだ」
「じゃぁ行ってくるね!」
そうして私達は転移陣の中に入り、転移した。
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