畑を整えたい
「なるほど・・・」
目の前は想像していた以上に広い畑が広がっている。
だから納屋も大きかったのか。そう一人で納得する。
それにしても、こんなに広い畑のどこから手を付けたら良いのか。
とりあえずペポの種を植えられるようにするには・・・
確かメロンはスイカとかキュウリとかと同じでウリ科だったような。前世の記憶を頭の中でフル回転で思い出す。
そして日当たりが良いところに植えてあげればいいのかな。
そう考えながら納屋から程近い畑の一画に目星をつける。でも納屋に畑を耕す道具なんてあったかな?
さすがに生えている雑草を抜くのは出来るが土を耕すのは大変だ。
「こういうときに魔法が使えたら便利なんだろうなー。でも土を耕す魔法なんてあるのかな?」
とりあえず、やることは決まった。まずは草むしりだ。
そしてそれが終わったら納屋で桑とスコップを探して、あーでも肥料はどうしたら良いかな。
育て方の知識としては頭の中にあってもそれを実現させるのは難しい。
まぁどうにかなるよね。
それから目印をつけておいた一画の草を抜き終えた俺は一旦休憩をとることにした。
カップの水をストレージの中に入れておいたのを思い出し、一気に飲み干す。
「美味いっ」
太陽が昇り日差しを浴びた身体は汗ばむほどの陽気で水が身体に染み渡る。
そうして地面に座り、手を大地に当ててお祈りをする。別に俺は無宗教ではあるが、日本人らしく色々な神様を奉ることを何とも思わない。
「大地の神様、ペポが育つように見守って下さい。」
こうやって塀の中の畑でもいつもお参りをしていて、そうするとたまに土からモグラのようなのような生き物が寄ってきてくれていた。
それで今日も同じように地面に置いた手に力を込めてお祈りをしていると、後ろから声がかかる。
「おぉ、畑仕事か?」
「おかえりラミス。そうだよ、畑仕事というか、草むしり? 鎌とか桑とか納屋にあるかなー?」
「探してみるか。ところでユウよ、地面に何かしたか? お前さんのいるところ一帯が凄い魔力を帯びてるぞ。」
「いや別に何もしてないよ・・・?」
「ただいまーって、どうしたの? ユウ朝からずっとここでなんかしてたの?」
「あ、ルーンもおかえりなさい。なんかしてたというか、ペポの種を植えたくてその為に畑の草むしりをしてたんだよ。」
「えー、ペポってそんなことして種植えなきゃいけないわけ? あーでも美味しいペポはいっぱい食べたいからユウが育てられるならそれは良いわね。」
「あはは。まだちゃんと育つかわからないよ。肥料とかも必要だろうしね。」
「ふむ。よくわからんが、それと今の状況とどう繋がるんだ?」
「なんでラミスがここにいたか分かったわ。たしかに不思議ね。」
俺は土に手を当ててお祈りをしただけで、それが何かと言われても困ってしまう。
「うーん、土にこうやって手を当てて美味しいペポが育ちますようにってお祈りしてたんだよ。」
そういって俺は再度お祈りをする。
「そういうことね。ユウ、あなた自分が何をしているかわかってやってるわけじゃないのよね?」
「え? 俺なんか悪いことしてる?」
「いいへ、むしろその逆くらいだけど・・・」
ラミスがちらっとルーンを見たのを俺は見逃さなかったが、多分いつもの感じでこれ以上聞いても濁されるだけだろう。
俺は次の会話を待つことにするとラミスが口をはさむ。
「ユウは大地神を信仰しとるのか?」
「いや、そういうわけじゃないよ? たとえばペポもそうだけど、畑が豊かになって色々育てられるようにしたいけどその為にはまずは土壌豊かな大地が必要でしょ?
だから、豊かな大地になるように大地の神様にお祈りしただけ。あとは、この土地の主様にもお祈りしてちゃんと育ったらお裾分けしなきゃだよね。」
「なるほどな。別に大地神が絶対とかそういうわけではなさそうだな。」
「うん。むしろどちらかというと無宗教というか無信仰だけど、都合が良いときは神様にお祈りだけしてる図々しい奴って感じだと思う。」
「はは、素直なやつだな。」
「たしかにー、笑う。」
ギャルだ。このまま大人になったらルーンは確実にギャル。そのうちつけまつげとかしちゃうんだろーなー。
あーでもこの世界にそういうのあるのかな?
「ユウ? ゆーうー? 大丈夫? 急に真顔だし。」
「あ、ごめんごめん、それでなんだっけ?」
「もう大丈夫よ。」
なんか話してるうちにどうでもよくなったし、俺は気になってることを聞いてみる。
「ラミスもルーンも何をしてたの?」
「儂か? 儂は毎朝森の様子を確認するという大事な仕事をしておるんだよ。」
「なにが大事な仕事よ? ペポだってユウがいなかったら私たちに内緒で一人で全部食べる気だったでしょ?」
「うるさいやつだな。儂がもらったんだからいいだろ。」
「ラミスばっかりズルい。それで私もラミスと同じようなものね。」
「なんかやっぱり大変そうだね。エレイナは?」
「うーん、あの子も同じね。ただ、動けるタイミングが私とちょっと違うって言ったらいいかしら。」
漠然としていてわからないけど、たぶん、日中はルーンの担当、夜はエレイナの担当とかそんな感じだなと理解しておく。
「それで、ペポを植えたいのもあるんだけど、他にもいくつかやりたいことがあるんだよね。」
俺は話しを別の方向に振ることにした。
「なになに、何したいの? 気になるぅ。」
興味深々といった感じでルーンが聞いてくる。
俺はやりたいことをルーンに伝えつつ、さっきふと思いついたことも加えて聞いてみる。
「俺お肉が食べたいんだけど、、、 お肉って贅沢?」
「あー、儂らは肉を食べなくても全然大丈夫だが、ユウが食べたいなら探してみるか。」
「私も妖精たちに聞いてみようか?」
「うん? 俺が思ってた答えと違う・・・ 」
「森に食べられる獣があんまりいなかったらだめだよなぁって。」
「いや、そんなことはないぞ。魔獣でも食べれるやつはおるだろうし。」
「え、俺に倒せるやつじゃないと無理だよ?」
「大丈夫だろ。」
「そうね、大丈夫だと思うわ。」
「とりあえず弓を作りたいんだけど、弦が無いからそれもどうしようかなって感じだしね。」
「ふむ、武器が必要ということか? そんなものはすぐにどうにかなるな。あとは防具か。他にもあるなら教えてくれ。まとめて聞いてみるからな。」
「どういうこと? まぁいいや。武器は必要だと思うけど俺、短剣と弓しか使ったことないよ。防具はわかんないからお任せになるけど。あとはなんだろう? さっき言った畑仕事に使えるやつとか?」
「よしよし、まとめて聞いてみる。すぐに手に入るだろ。」
「えー、ラミスはドワーフねきっと、、、 そうしたら私はどうしよう? やっぱり妖精たち? いや、精霊にも協力してもらう必要がありそうね。」
「待って待って」
なんかどんどん話しが大きくなってる気がする。危ない。しかもドワーフ? ドワーフっていわゆる鍛冶が得意でって俺の知識が当てはまるやつ??
でもドワーフがいるなら会ってみたい。
ラミスとルーンの会話は置いといて俺はもう違うことを考えることにすると、ふと足元にいつも見かけてた土竜君が顔を出したのが見えてなんか嬉しい気持ちになった。
土竜君は塀の中にいるから心配してたんだけど、ちゃんと無事だったみたいで良かった。
怪我とかない? 俺はラミスに助けてもらって元気だよ? 土竜君も元気そうでよかった。
「もぐー?」
「ぬあっ?」
「あれー?」
「もぐ、もぐもぐもぐ? もぐー。もぐもぐ。」
「黙れ、怠け者め。」
「ほんとに失礼なやつ。」
「もぐー!!」
うん、今日も賑やかな一日になってる。 そう思って真っ青な空を見上げると太陽が眩しく輝いていた。
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