【短編】姫よ、わたしを選べ! 〜イケメン皇子たちがブサカワ姫の婿になろうと熾烈な戦いを繰り広げる、これは国の存亡をかけたサバイバル戦争だ!〜
雨 杜和(あめ とわ)
物静かな美形皇子が選んだ相手は
「ま、まさか。皇子さま。そのような婚姻に向かうなどとは、王さまはお気が触れたのでございましょうか」
ドタバタと足音高く第五皇子の寝室に走り込んできたのは、侍従の
なにかと世話焼きが高じて、『皇子の
一方の皇子と呼ばれた青年は、北門王国の第五皇子
王国きってのイケメン皇子。
その類いまれなる美貌で……、いや、男性だから美貌という表現も妙だが、美貌が彼の容姿を表現するに、もっとも的を射ているのだ。
この点について、異論を挟む者はいない。
濃いというより、すっきりとした端正な顔立ち、そのさまは、さながら美人画から抜け出したようで……。
文机に頬をつき庭園を眺める姿は、まさに絶品。自然と風景に溶け込む様子は、当代一の名画伯でさえも、描きだすのは困難な優雅さだろう。
長い黒髪が白磁の肌を際立たせ、後毛が頬にかかる姿をちらりと見れば、すべての女たちを悶絶させるほどの色気がある。
その類い稀な容姿、そのまばゆいばかりの美貌。
きらりと光る美しい歯を見せてほほ笑み、一瞥すれば、女を欲望の淵に叩きおとし、そのまま崖下へ一直線にむかわせる破壊力、さらに、その先には大きく口を開けた
まさに傾城の美女ならぬ、傾城の美男。
「そんな、のんびりとご自分の美に酔っている場合じゃございませんよ、
「いや、違うな」
「では、なぜでしょうか。いかに、美貌のあまり王さまの嫉妬から寵愛が薄く、王位継承権第五位の、お顔はともかく、地位的には、そこらへんのザコ皇子でらっしゃいます皇子さまです。こ、これは、むごい話でございます」
「何気に、日頃のうっぷんを言葉に乗せてないか」
「ま、まさか、そのような事を、わたくしめがするはずもありません。断固、抗議します」
うっかり裏を読まれ、むだに賢いと内心イラ立ちながら、
多少、痛みがあったが、皇子は静かに耐えている。
あまり感情を表に出さない男なのだ。それが、逆に神秘性を与え、さらに女たちを虜にする。
「皇子さま、わたくしのような下賎なものが、そのような憶測を申すはずがございません」
「常に言われているのは、気のせいだろうか」
「そこは、とりあえず、天の向こうにおいて。皇子さま、これだけはいただけません。というより不可能でございます。ご自分のことを知らな過ぎます。たとえ、いかにご容姿とかがご不自由な姫とはいえ、あのケタ違いの大国のひとり娘。どの王国も舌なめずりするほど、姫と、いや王国とツテを持ちたいのです。姫と結婚したい方は、それこそ星の数ほどで。そのなかで、顔勝負だけで勝ち抜けると思われるなど、甘い、甘過ぎます。顔だけですから」
これは珍しいことだと、
「わたしが頼んだ」
「へ?」
「間抜けヅラを見せるな。わたしから頼んだのだ」
「ほや? わたくしめの耳が遠くなったのか。それとも空耳でしょうか、奇妙なことを聞いたような気がしたのですが」
「わたしが頼んだのだ」
「またまたまたぁ〜〜。皇子さま、ご冗談でしょうか」
「冗談ではなく、策略と言ってくれ」
侍従の言葉に、皇子は目を細めた。
策略という言葉とはうらはらに、深く憂いに沈んだ表情を浮かべている。自分の策略とはいえ、ちと間違ったかもと内心では思っているのだ。
「いったい、何の策略でございますか」
皇子は気まぐれだ。
少年時代から、彼の従者として仕えている
その日は、皮肉にも明るい日差しが、やんわりと降りそそぐ美しい日だった。
彼が天をあおぐと、天も彼に同調したのか、白い
その姿、まさに奇跡。
「惚れてしまいます」と、彼の美貌に見慣れた浩でさえも、思わず小声でつぶやいたほどだ。
(つづく)
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