第33話

里美はゆっくりと携帯電話を開いた。


「これは……」


「どうして携帯彼氏の話を裕くんにしたんですか? あなたが話したせいで、裕くんは、携帯彼氏に『あい・すくりーむ』というサイトに興味を持ってしまった」


「そんなはずない……」


里美は小さな声で呟いた。


携帯彼氏の話をした時の裕之は、まるで興味がなさそうに気のない返事をしていた。


それなのに、どうして――。


里美は携帯電話に映し出されている文字を心の中で読み上げる。




『愛する人へたどり着くまで未来永劫廻り続ける』


『真実が知りたい?』


『ラブゲージ0』




――生まれていた……。すでにこのとき、携帯彼女は世に生み出されていたんだ……。


画面には、女の画像。


髪は短くボーイッシュな印象だ。


化粧っけはないが、スポーツのできそうなさわやかな女が、裕之の携帯彼女としてそこに存在していた。


――この携帯彼女のラブゲージが0になったから、裕之は死んだ……。


里美は頭を抱えた。


「裕くんは、あなたに何を伝えようとしたんでしょうか? なぜ彼は死ななければならなかったんですか?」


中島典子の質問に、里美は答えることができない。


「どうして私がここに来たかわかります?」


無言のままの里美に、中島典子は話を続けた。


「本当は、里美さんを責めにきたんじゃないんです。まずは……裕くんのこと、謝ります」


中島典子は深々と頭を下げた。


「ここへ来た本当の理由は、裕くんの思いを里美さんへ伝えるためです」

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