第27話

ウトウトしては目を覚ます。


それを繰り返しているうちに日が昇る。


村瀬は、ここ最近まとまった睡眠を取っていない。


布団から這うようにして出た村瀬は、熱めのシャワーを浴び、手早く身支度を済ませた。


携帯電話を開く。


どこからも着信はなかった。


絵理香の友人たちには、何かわかれば連絡してもらうよう伝えてあった。


その際失踪に関する有力な情報は、絵理香の友人誰ひとりからも聞くことはできなかった。


携帯電話をジーンスのポケットにしまおうとしたとき、着信メロディーが鳴った。


村瀬は慌てて手を止め、着信ボタンを押した。


電話は井上からだった。


「朝から悪いな。実は昨日話していた澤田ってヤツの事故。詳しいことが聞けたんだ。それと、その後の携帯電話の行方も……。これから会えないか?」


井上からの電話を受けて、村瀬は飛ぶようにして井上との待ち合わせ場所へと向かった。


昨日、井上と入った喫茶店。


村瀬が店に入ると、カウンターに近い席に井上がコーヒーカップを目の前に腰をおろしていた。


村瀬に気がついた井上が軽く右手を挙げた。


「こんなにも早く情報がつかめるなんて、思ってなかったよ。ありがとう。それより悪かったな。貴重な土日をつぶさせてしまって」


村瀬は深々と頭を下げた。


「いいんだって。気にするなよ」


「そうはいかないよ。昨日だって、何か用があったからこんなところまで来てたんだろう?」


井上は結婚してから奥さんの実家に近い場所へと引っ越していた。


ここへ来るまでには、電車を2本乗り継いで30分以上かかる。


「たいした用じゃないよ。それより、澤田の携帯電話を持っている人物がわかったんだ」


「本当か!?」


「栗原 稔。澤田の友達で、澤田が歩道橋から転落したときに、一緒にいた男だ」

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