第26話
井上と別れた村瀬は、いつものように絵理香の部屋を確認してから自分の家へと戻った。
すでにとっぷりと日が暮れていた。
部屋に入り、カーテンを引く。
電気から延びるヒモを引っ張ると、蛍光灯が2、3度瞬いたあと点灯した。
散らかった部屋が浮かび上がる。
村瀬はため息をもらしながら、床に脱ぎ散らかした服を足でどかした。
一人暮らしは長かったが、これほどまでに部屋が荒れたことはなかった。
台所のシンクには、カップラーメンの器が、いくつも重なって置かれている。
村瀬はそれを器用によけながらやかんに水を入れた。
湯が沸くまで、先ほど作った空間へと腰を下ろす。
ふーっと大きく息を吐き出したあと、両手で顔をおおった。
村瀬の体は、日増しに疲労が蓄積されていた。
体はフラつくほどの疲れているのに、眠気を感じることができない。
やかんが沸騰を知らせる汽笛を鳴らす。
村瀬は重たい体を起こし、ガスコンロの火を止めた。
台所に無造作に置かれているビニール袋の中から、カップメンを取り出す。
湯を注ぐと、目の前の視界が霧に包まれたように真っ白になった。
井上との再会は、村瀬にとってはラッキーだった。
彼に新聞社に勤める友人がいたことも、村瀬にとっては好材料だった。
「澤田の携帯を持ち去った奴が、見つけられるかもしれない」
一縷(いちる)の望みであっても、今はそれを信じることしかできなかった。
とうに3分を過ぎてしまったラーメンはまずかったが、空腹さえ満たすことができれば、味など村瀬には関係なかった。
村瀬は亜矢にメールをしておくべきか迷っていた。
何度も送受信することになったら面倒だ。
迷った挙句、村瀬はそのままベッドへと倒れこんだ。
少しでも横になって体を休めなければならない。
今、自分が倒れでもしたら、一体誰が絵理香を救えるというのか。
余計なことは考えたくなかった。
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