第31話

「誰って、あなたこの前まで真由美の彼氏だったじゃない。私のことだって知ってたでしょ?」


由香が顔を真っ赤にしながら、携帯電話にむかって叫んだ。


カラオケボックスを選んで正解だった。


ここならどんなに大声を挙げても、誰にも迷惑がかからない。


「知らないで済むような話じゃないのは、リク、あなたが一番よく知っているはずよ! だから真由美の携帯電話にメッセージを残したんでしょ!」


怒りと悲しみをぶつける相手は、目の前の携帯電話しかない。


里美は携帯電話を持ち上げると、リクをきつくにらみつけた。


「ふざけないで! あんたが残した言葉、真実が知りたいってどういう意味?」


「あ~、そういうこと」


里美の問いに、リクはかったるそうに唇を前へと突き出した。


「元カノの情報は、リセットされる仕組みだから。ホラ、プライバシーがどうのこうのとか、最近うるさいからさー」


リクはそう言って肩を縮めた。

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