第30話

里美は1つ身震いしてから、携帯電話に目線をやった。


先ほどまで静止画だった携帯彼氏リクは、今は画面の中で自由に動いていた。


やはりラブゲージがなくなると、携帯彼氏は動かなくなるようだ。


「ちょっと! どういうことなのか言いなさいよ

!」


「あの時の電話は一体何なの?」


里美と由香がいっせいにリクに向かって話しかける。


リクは戸惑った表情を浮かべ、頭を掻いた。


「はじめまして。名前はリクです。あのー、ボクの彼女はどちらでしょうか?」


照れ笑いを隠しながら、リクは里美と由香を交互に眺める。


「とぼけないで、さっさと答えなさいよ!」


里美が怒鳴ると、天井に設置されているスピーカーから、甲高いノイズが響いてきた。


テーブルの上に置かれているマイクがオンになっていたようだ。


里美は乱暴にマイクを拾い上げると、電源を切ってソファーへと投げつけた。


「真由美のこと、話して!」


里美は先ほどよりも少し抑えた口調で言った。


「真由美って誰?」


携帯彼氏リクは再び頭を掻いた。

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